“夏ごもり老化”はプラス10分歩きで解消できる?
毎日の生活の中に“ほんの少しの運動習慣”を取り入れよう!
伊藤和弘=フリーランスライター
運動しないと、筋肉が減るだけでなく、骨密度も下がっていく

細井副院長によると「運動しないと筋肉が減るだけでなく、関節も硬くなるし、骨密度も下がっていく」という。一方、閉経して骨密度が下がった女性たちを対象にした調査からは、運動によって大腿骨や腰椎の骨密度が上がることも確認されている(Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul 6;(7):CD000333)。
運動は筋肉の減少を抑え、肥満を防ぐだけではない。筋肉に刺激を与えると男性ホルモンの分泌が高まる。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、がん、認知症など、多くの発症リスクを下げることが確認されている。
とはいえ、運動の習慣を持たなかった人が“運動を続ける”のは、“禁煙”以上に難しいのは読者諸兄もよくご存じの通り。一念発起してジョギングを始めたりスポーツクラブに入ったりしても、三日坊主で終わってしまう人が後を絶たない。
長続きしない最大の原因は、いきなりハードルを上げすぎることだろう。
かつて「有酸素運動は30分以上続けないと意味がない」などと言われた。しかし、筋肉に刺激を与えるという点で考えればそんなことはない。最近のスポーツ医学では、「運動は少しだけでも効果がある」ことが明らかになっている。
WHO(世界保健機関)では「週150分以上の運動」を推奨している。米国の国立がん研究所が約66万人のデータを分析したところ、「週150分に満たないが運動の習慣はある」人も、まったく運動しない人に比べると死亡リスクが20%低かった(JAMA Intern Med. 2015 Jun;175(6):959-67)。
18~100歳の5万5137人を15年間追跡した疫学調査から、「1日わずか5分のランニング」でも、まったく運動しない人に比べて死亡リスクが3割も下がることが確認されている(J Am Coll Cardiol. 2014 Aug 5;64(5):472-81)。