若い体を目指すなら“ミトコンドリア”を増やせ?
運動、摂食などの良い生活習慣が老化を防ぐ
伊藤和弘=フリーランスライター
歳を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見・体力・健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。今回のテーマは「ミトコンドリア」。細胞の中にある小さな器官、ミトコンドリアがアンチエイジングに大きく関係しているという。若々しく見える人ほどミトコンドリアの数も多いとか。ではどうやってキープしていけばいいのか? 増やすことはできるのか? 循環器と抗加齢医学の専門医である香里ヶ丘大谷ハートクリニックの大谷肇院長に解説してもらう。

ミトコンドリア、という言葉は聞いたことがあると思う。だけど、「ミトコンドリアってなに?」と聞かれたら、きちんと答えられない人がほとんどではないだろうか。
ミトコンドリアとは細胞の中にある小さな器官のひとつ。酸素を利用して、糖や脂肪酸からATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー源を作り出す。ATPは細胞の活動に欠かせない燃料であり、これがなければ心臓も動かない。
赤血球など一部を除き、動物や植物などの細胞内にはミトコンドリアがあり、人間の場合は1個の細胞に平均2000個も入っているという。もともとは「外部にいた細菌だった」と香里ヶ丘ハートクリニック(大阪府枚方市)の大谷肇院長は説明する。
「もともとは大腸菌などと同じ細菌の仲間。20億年前に我々の祖先である古細菌の中に住みついて共生を始めた。その結果、古細菌は細胞へ、単細胞から多細胞へと進化していった。ミトコンドリアとの共生がなければ、今でも地球には細菌しかいなかったはず」
そう聞くとちょっと不気味だが、我々の祖先がミトコンドリアの“下宿”を許したのにはもちろん理由がある。もし細胞にミトコンドリアがいなければ、1分子のブドウ糖から2分子のATPしか作れない。ところがミトコンドリアはうまく酸素を利用することで、1分子のブドウ糖から38分子ものATPを作ることができる。断然、効率が良いのだ。