若い体を目指すなら“ミトコンドリア”を増やせ?
運動、摂食などの良い生活習慣が老化を防ぐ
伊藤和弘=フリーランスライター
カロリー制限と週3回の運動で若さをキープ!
空腹になると、AMPKが働くことでPGC1αが活性化され、新しいミトコンドリアが作られる。つまり、カロリー制限でミトコンドリアの再生がうながされるということ。実際、カロリーを25%減らした食事を6カ月続けると、筋肉中のミトコンドリアが増えることが確認されている(PLoS Med. 2007 Mar;4(3):e76)。
一方、運動するとATPが消費される。新たに作る必要が出てきてAMPKが働き、ミトコンドリアの新陳代謝が盛んになる。ジョギングやウォーキングといった有酸素運動をすると酸素の消費が多くなり、一時的に活性酸素も増えるが、「ミトコンドリアの質が良くなることで、結果的に活性酸素の排出量が大幅に減る」と大谷院長。

脂肪を燃やす有酸素運動に加えて、筋力トレーニングで筋肉量を増やすことも大切だ。基礎代謝が上がり、じっとしているときに消費するカロリーが多くなる。
AMPKを動かし、ミトコンドリアの新陳代謝を良くするには「30分~45分程度の有酸素運動が有効。いったんAMPKが活性化すると36時間ほど効果が続く。そこから考えると2日に1回、週3回のペースで運動すれば理想的」と大谷院長は話す。
年を取るとミトコンドリアの質が悪くなるが、運動によって劣化を抑えられる。カナダのマクマスター大学で行われた研究によると、日常的に運動する習慣を持つ平均70歳の高齢者たちは、ミトコンドリアの機能が若者とほとんど変わらなかった(PLoS One. 2010 May 24;5(5):e10778)。
「カロリー制限と運動」といえばダイエットの王道だが、やせて健康になるだけではない。ミトコンドリアの質と量を保って老化を抑えることにも直結しているのだ。
それ以外の生活習慣で、特にミトコンドリアに良くないのはタバコ。「シアン化カリウム(青酸カリ)はミトコンドリアの活動を止めることで生物を即死させるが、タバコの煙に含まれるシアン化水素はそれに近い作用がある。吸うと頭がクラクラするのは脳のミトコンドリアが一時的に活動を止めるため」と大谷院長。シアン化水素によって働きを抑えられたミトコンドリアには電子がたまり、活性酸素の排出量が増えるという。そのため、「タバコはがんのリスクが高くなるだけではない。全身の細胞に酸化ストレスを与え、確実に老化を進める」と大谷院長は警告する。
元気なミトコンドリアをキープし、若々しさを失わないためにも、禁煙・ダイエット・運動を心がけよう!
(イラスト/うぬまいちろう)
香里ヶ丘大谷ハートクリニック 院長