日経グッデイ

走り亀 ~ヘタレランナー フルマラソンへの道~

目標はビリでも完走! 人生初のハーフマラソンに挑む

第25回 膝痛にはもうビビらない【軽井沢:前編】

 カメ子=日経Gooday

膝の痛みに悩まされ、自信ゼロで迎えたハーフマラソン。レースの前々日に左膝にテーピングを施してもらい、土壇場で完全に開き直ったカメ子。こうなったらレースを楽しみ、無心で走るしかない。ヘタレの名に懸けて(?!)軽井沢の街を走り抜けよう!

 絶不調のまま、人生初のハーフマラソンに臨むことになってしまった、ヘタレランナー・カメ子(詳しくは前回記事「治らない膝、迫りくるハーフマラソン」参照)。レース前の2週間は、もろもろの準備に追われながら、プレッシャーの余り日々涙目で過ごしていた。だが、土壇場で、ついに何かが吹っ切れた。

 とにかくスタートラインに立とう。せっかく軽井沢まで行くんだから、楽しんで走らなきゃもったいない。走ることが「楽しい」と思えるようになった、そのうれしい変化をかみしめながら、膝の状態の許す限り、行けるところまで行ってやろうじゃないの!

治療院に駆け込み、テーピング

レース前に自分で貼り直さなければならないため、貼り方を覚えるためにパチリ。

 前回の指導日で痛くなってしまった左膝は、その後、少し落ち着いていた。レース1週間前の最後の自主トレでは、5kmを7分24秒/kmのペースで走ることができた。一方で、日常生活で歩いているときに少し痛みが出たりもしていた。

 そこで、真鍋未央コーチの勧めで、以前、施術体験をさせていただいたスポーツマッサージの治療院(過去記事「ランの膝痛に悩み、スポーツマッサージ初体験!」参照)に、レースの前々日に駆け込み、膝の周辺にテーピングをしてもらった。

 薄くて伸縮性があるテープで、負荷がかかりやすい左膝周辺の筋肉の動きが適度に制限され、走る際にサポートしてくれそうだ。なによりも、不安な部分に貼るだけで、守られているような安心感が芽生え、なんだか少し元気が出てきた。

「アメ」と「ムチ」に挟まれ、どうなるこの3人旅?!

 そしていよいよ迎えたレース当日の朝。軽井沢の空は、雲一つない秋晴れで、朝日を浴びて紅葉がキラキラと輝いている。テーピングもばっちりした。前夜から油っぽいものを控え、糖質やビタミンBをしっかり摂った。膝も痛くない。しかも、最近タロット占いの勉強を始めたカメラマンM氏によると、この日のカメ子、「大吉ではありませんが、順調にまわると出ています!」。

 なんだか幸先がいいぞ!(←単純)

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6000人が参加した「サンスポ軽井沢リゾートマラソン」。真鍋コーチお気に入りの、秋の軽井沢を彩る人気の大会だ。

 9:05のスタートに備え、軽井沢プリンスホテルスキー場の駐車場に8:00ごろ到着。受付を済ませ、ウォームアップを開始した。実は今回、カメ子と一緒に走ってくれる人が、真鍋コーチのほかにもう1人いた。この企画をカメ子に無茶振りした張本人である、ドS編集長。なんでもハーフマラソンを走るのは約10年ぶりだそうだ。

 「よかったな。心強いだろう?」(編集長)

 「こ、こころ強いです…( ̄ロ ̄;)」(カメ子)

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「アメ」と「ムチ」に挟まれた、最強の布陣?!

 スタートまであと30分。トイレを済ませ、エナジーチャージをして、集団後方の自分のブロックへ移動した。

 さ、寒い!

 この日の軽井沢の朝の最低気温は、2℃。スタート時には9℃まで上がり、風もなかったものの、日陰に入ると、とにかく寒い! 走り出せば体も温まり、気温も上がっていくはずだが、スタート前のこの寒さはつらかった。

 凍えながら、スタートの号砲を待つこと約15分。遥か前方でカウントダウンが始まり、ついに、集団が動き出した。いよいよだ!

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水分補給も済ませ、ついにスタートです!

6つの関門をいかに制限時間内に通過するか

 想定では、スタートまでのタイムロスは4分くらいを見込んでいたが、実際には2分半でスタートラインを超えることができた。

 「よかった! 思ったより短く済んだので、少し余裕ができました」(真鍋コーチ)

 「サンスポ軽井沢リゾートマラソン」のハーフマラソンの制限時間は、グロスで2時間40分。カメ子たちは制限時間いっぱいでの完走を目指して、7分20~30秒/kmのペースで走る。関門は6カ所あり、それぞれの制限時間は以下の通りとなっている。

「サンスポ軽井沢リゾートマラソン」コースマップ
(大会プログラムより。地図上、3.6km関門とあるのは、5kmの部の関門)
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関門と制限時間
関門制限時間
スタート(号砲)
 ↓(45分=8分49秒/kmペース、タイムロスが4分の場合、41分=8分01秒/kmペース)
第1関門(5.1km)45分
 ↓(6.6kmを48分=7分16秒/kmペース)
第2関門(11.7km)1時間33分
 ↓(1.3kmを8分=6分09秒/kmペース)
第3関門(13.0km)1時間41分
 ↓(2.0kmを15分=7分30秒/kmペース)
第4関門(15.0km)1時間56分
 ↓(2.6kmを19分=7分18秒/kmペース)
第5関門(17.6km)2時間15分
 ↓(1.7kmを12分=7分03秒/kmペース)
第6関門(19.3km)2時間27分

 最初の5.1km関門通過は問題なさそうだが、ここの通過がギリギリになってしまうと、その先はほぼ常に7分20秒を切る余裕のない(というかまったく経験のない)ペースで走らなければならなくなる。とにかく、最初のうちはできるだけ余裕を持って関門を通過していかなくてはならない。

 走りながら厳密な計算はできなかったのだが、2分半のタイムロスだったので、結果として、ゴールまでの平均ペースで「7分27秒/km以上」が求められるレースとなった。

なんだか楽しい!沿道に手を振り、絶好調の滑り出し

 スタート後、まずはトンネルを抜けて線路の北側、旧軽井沢のロータリーを目指して走り出す。最初は団子状態で走っているためそれほどスピードは出ないが、1kmくらい走ると徐々に集団がばらけ、7分20秒/km前後のペースに整ってきた。走り始めてしまえば陽射しも暖かく、冷たい空気も心地いい。そして沿道からは温かい声援が。

 なんだか、楽しい!!

 自然と笑顔がこぼれ、伴走していた編集長いわく、「まるで選挙活動中の政治家のように」もれなく沿道に手を振り返し、「がんばりまーす!」と応えるカメ子。テンションが明らかにハイになっている。

順調な滑り出しを見せるカメ子(2.5km付近)。
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 「1キロ7分10秒~20秒。順調すぎるくらい目標通りのペースで来ています!」(真鍋コーチ)

 旧軽井沢のロータリーを折り返し、すこぶる快調に走るカメ子。だが、3kmを通過したあたりで、やってきたのだ。“例の痛み”が…。

焦るな、左脚がダメなら右脚がある

「き、きた…」

 左脚で着地するごとに、膝の外側に軽い痛みが走る。これまでの経緯から、痛くなるのは想定内だったが、もう少し長く走ってから痛くなってほしかったな、と一瞬悲しくなる。

 だが、この日のカメ子に焦りはなかった。ここからががんばりどころだ。左脚がダメなら右脚がある。今日は練習じゃないから、大事を取ってやめたりせず、行けるところまで、行ってやる!

線路を超える上り坂。コーチに元気に手を振る(撮影:真鍋コーチ)
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 痛みのない右脚に重心を傾け、アンバランスなフォームになりながらも、しばらく走り続けていると…

 「…あれ?」

 なぜか、痛みが減ってきた。左膝の違和感は多少気にはなるが、普通に両脚に均等に重心を乗せて走れるようになってきている。一度痛くなったら悪くなる一方だと覚悟していたのに、途中で良くなるというのはうれしい誤算だった。そのままの勢いで、線路を越える上り坂へ(その手前で最初の5.1km関門を通過していたのだが、集中しすぎていて気づかず…)。

 坂道はやはり多少きつく感じるが、一歩一歩着実に。下りは膝をいたわりながら若干ペースを落とし、いよいよ木立に囲まれた別荘地帯へ入っていく。

き、気持ちよすぎる。軽井沢、最高!

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(キャプ)逆光で輝く木々。満面の笑顔でレースを満喫中(5.5km付近)。

 抜けるような青空。暑くも寒くもない、ひんやりとした空気。秋の陽光を浴びて輝く紅葉や黄葉。き、気持ちよすぎる!! 沿道では地元の人たちが温かい声援を送ってくれ、私設エイドを出してくれているファミリーの姿に癒される。

 「レースのモチベーションを保つために、ロケーションは大切」とはかねて聞いていたが、本当にその通りだと痛感するカメ子。いやあ、軽井沢、最高。このレースを選んで本当に良かった!

 走りながら、「気持ちいい!」「楽しい!」と何度も口に出すカメ子をみて、真鍋コーチ、「カメ子さん、元気すぎ(笑)」。ここのところずっと沈んだ様子のカメ子を見て心配してくれていただけに、コーチもさぞかし拍子抜けしたに違いない(いや、レース本番を知り尽くしたプロは、もしやこの展開を見越していたかも?!)

殺風景なアップダウンを乗り越え、ついに折り返し地点へ

 前日にコースを一通り車で廻っていたため、先の展開が見通せていたことは、精神的にプラスに働いた。別荘地帯の細い道を抜け、広い道路に出ると、そろそろ8km。早くも折り返して戻ってくる先頭集団とすれ違う。そのスピードに驚きながら、だらだらとしたアップダウンのある線路沿いの一本道へと向かう。ここはひたすらまっすぐで殺風景なので、下見の時に「心が折れそう」と感じていたポイントだ。だがカメ子、まだまだ元気。

 「腕の振りもリズムもいいですし、おしゃべりしながら笑顔で走れているんだから、順調そのものですね!」(真鍋コーチ)

 「なんだ、けっこうやるな、カメのくせに」(編集長)

 アップダウンを無事クリアし、中軽井沢駅に向かう大通りに入れば、もうすぐ約10kmの折り返し地点だ。すごい! もうコースのほぼ半分を走ってしまったんだ。なんだかあっという間に感じる。余力は十分。ポールを折り返し、よし、あと半分、がんばろう! と気合を入れ直す。

やった!折り返し!(撮影:真鍋コーチ)
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 折り返してもと来た道を走っていくと、ほどなくして反対側を走ってくるランナーの列が途切れた。

 「さっきすれちがったランナーが最後尾みたいですね。あとは最初の関門で足切りされてしまったんでしょう」(真鍋コーチ)

 ひ、ひえ~~~。最後尾のランナーとの距離は、およそ1kmといったところか。順調に距離を伸ばすカメ子にひたひたと忍び寄る関門制限。このときはまだ、その後待ち構える過酷な試練を知る由もないカメ子だった…。(2015年11月27日公開予定「ついにこの瞬間が! ハーフマラソン完走でカメ子号泣」に続く)

(写真:村田わかな)

(協力:ダンスキン〔カメ子着用:Non Stress Tシャツ 4300円、ショートパンツ 6000円、以上すべて税別〕、大塚製薬)

真鍋未央(まなべ みお)さん
ランニングアドバイザー
真鍋未央(まなべ みお)さん

福岡県出身。高校時代、中・長距離の陸上選手として活躍し、卒業後は資生堂ランニングクラブに所属。同クラブ在籍中にマラソンに転向。ベストタイムは2時間55分27秒(2006年1月29日大阪国際女子マラソン)。現在は、ランニングアドバイザーとして女性向けのセミナー、ランニングイベント「miobiRun」を定期的に開催するほか、TVや雑誌など各種メディアで活躍している。公式ブログはこちら
著書『週1回のランニングでマラソンは完走できる!』(池田書店)
(写真:村田わかな)