ランナーの大敵、貧血予防は「鉄分をとる」だけじゃダメ
ルミ先生 本当ですよ。長時間動き続けるために酸素は不可欠ですから、酸素を運ぶ赤血球中の血色素(ヘモグロビン)量も多く必要になります。また、運動して大量に汗をかけば、汗と一緒に鉄分も失われます。さらに長時間走ると、脚底にかかる衝撃で赤血球が壊されてしまい、貧血の一因になるんです。
脚底の衝撃で赤血球が壊される?! それは知りませんでした(愕然)。
ルミ先生 貧血状態になると、酸素が体の隅々まで届けられなくなり、スタミナ切れや疲労感の蓄積につながりますので、ランナーの貧血対策は非常に重要です。健康診断の一般的な血液検査で血中のヘモグロビン不足(鉄欠乏性貧血)と診断されなくても、体に蓄えられた「貯蔵鉄」が減っている、貧血予備軍(潜在性鉄欠乏性貧血)のランナーもたくさんいます。貯蔵鉄が減っている状態では、一生懸命練習してもエネルギーをスムーズに作りだせなくなります。だから、貧血予防はとても大事なんです。
そうなんですね! 私ももしかして、鉄が不足していなければ、もっと長い距離を走れるのかも…?!

ルミ先生 カメ子さん、鉄剤は普段どんな風に飲んでいます?
食後が多いです。
ルミ先生 そのとき、必ずたんぱく質と一緒にとるようにしてください。貧血対策として、鉄だけを取ればいいと思っている人がとても多いのですが、もともとヘモグロビンは、「ヘム(鉄)」と「グロビン(たんぱく質)」が結合したものなので、たんぱく質が不足していると、鉄だけをとってもヘモグロビンは合成されないんですよ。
そ、そうだったんですかっ?!
ルミ先生 さらにいえば、鉄の吸収を助ける「ビタミンC」も必要です。「鉄分」「たんぱく質」「ビタミンC」の3つは貧血対策の「三種の神器」として覚えておいてください。
ビタミンCのことはかろうじて頭にありましたが、たんぱく質もセットだったんですね。勉強になりました。
ルミ先生 鉄はレバーやあさり、ホタテ、牛肉、ホウレンソウ、小松菜、ひじきなどに含まれています。レバーや牛肉など動物性のものは、それ自体がたんぱく質も含んでいますので、ビタミンCと組み合わせればOK。レバーが苦手な人はひじきの煮物に肉や魚、柑橘類やイチゴなどのフルーツなどの組み合わせもいいでしょう。
さらにいうと、いくら貧血予防に鉄やたんぱく質をとっても、糖質をきちんととっていないと、集中力や持久力の低下にもつながってしまいます。これに関しては、運動の前後のとりかたが重要になってきます。
そうなんですか! トレーニングやレース前後の栄養補給のポイントも、ぜひ教えてください(後編「レース前後の栄養補給、こうすれば強いランナーになれる!」に続く)
(株)しょくスポーツ代表取締役、スポーツ栄養士、管理栄養士

競泳のオリンピックメダリストやプロ野球選手など、数多くの一流アスリートの栄養サポートを行い、現在は Jリーグ「清水エスパルス」やなでしこジャパンの某選手などの栄養サポートを手がけるほか、講演活動や食育イベント主宰、地域食材を生かした料理プロデュース・商品開発など幅広く活躍中。
中学・高校ではバスケット選手として全国大会に出場。ゴルフ、テニス、ランニングも趣味で、プレイヤーの視点を生かした栄養指導にも定評がある。