日経グッデイ

走り亀 ~ヘタレランナー フルマラソンへの道~

「10kmの壁」なんてものはない!

第19回 自己暗示をかけて12kmランに成功

 カメ子=日経Gooday

本格的な夏の到来を前に、夏トレの基本を学んだカメ子。真夏は距離を無理に伸ばそうとしなくてもいいとはいうものの、秋~冬のフルマラソン参戦を見据えて、今の段階で何か1つ達成感を味わっておきたい。そんなカメ子に真鍋コーチが提案してくれたものとは…?

 真鍋未央コーチによる指導の下、夏のトレーニングのポイントを学んだ前回(「夏ランの前に補強トレの新メニューをマスター!」「8kmラン+スピード走でトレーニングも『夏仕様』」)。真夏は距離を伸ばすことに固執しなくてもいいとはいうものの、涼しくなるのを待っていたら、あっという間にランニングシーズンがやってきてしまう。秋のハーフマラソン、秋~冬のフルマラソン参戦を見据えて、今の段階で何か1つ達成感を味わっておきたい気もする。

 そんなカメ子の胸中を察してか、真鍋コーチがこんな提案をしてくれた。

 「10kmのナイトランの大会に出てみるなんてどうですか? 昼間は暑くて思うように走れなくても、夜なら涼しいので距離も伸ばせますし、夜景を見ながら独特の雰囲気を楽しめます。レース経験を積む意味もありますが、真夏の練習の一つの選択肢、という感覚で検討してみてもいいと思いますよ」

 ナイトラン!

 調べてみると、金曜日の夜に、部分的にライトアップされた公園の中を走る大会のようだ。仕事帰りに夜の公園を走るなんて、なんだか都会のランナーっぽくってかっこいい~! 会場は海沿いなので風もあり、暑くて思うように走れないストレスも解消できるかもしれない。なにより、10kmならもう走れたし(1回だけだけど)!

 「走ってみたいです!」

 3kmでも腰が引けまくっていた初レース(詳しくは「暴走?迷走? まさかの“ぼっち参戦”で初レースに挑んだ結果」)のときとは打って変わって、即答するカメ子。身近な目標ができれば、自主トレにも力が入るというものだ。

なかなか破れない「10kmの壁」

 「次回、ナイトラン前の指導日には、夕方の涼しい時間帯を選んで、いつもの公園の周回コースではなく、アップダウンのある公道を10km走ってみましょう。それまでの間、暑さや体調と相談しながら、5~10kmを目安に無理せずトレーニングを続けてください」(真鍋コーチ)

 そうアドバイスを受けてから、1カ月の自主トレは、以下のような感じで進んだ。

 指導日直後は、張り切って同じ週の半ばにランニングの時間をとってみた。だが、この日の最高気温は、さらに上がって28℃。じりじりと照りつける太陽を避けるように木陰を求めて走ったものの、汗が吹き出し、いつものように走っているつもりなのに、思うように足が前に出ない。あれ、いくらカメ(子)とはいえ、私ってこんなに走るの遅かったっけ…? これが、夏のランニングというものか。まだ体が暑さに慣れていないだけに、つらい…。

 結局、この日は10kmどころか5.7kmで息が上がってつらくなり、歩いてしまった。ここのところ、走るペースが当初の8分~8分30秒/kmから徐々に速くなり、7分台後半に上がってきていたのだが、この日は8分/kmをオーバーするスローペースで終わった。

 10kmランに成功してから気づけば約1カ月。フルマラソンの距離は10kmの4倍以上もあるのに、またしても足踏み状態が続いている。10kmの壁は厚い。先は長いなあ…。

 つい弱気になるカメ子を、この企画にウエアを提供してくれているダンスキンの担当Mさんが、こんな風に激励してくれた。

「壁を作っているのは自分自身。本当はもっと走れるはず!」

 「『壁』と呼ぶことで、自分の中に限界を設定してしまっていませんか? 10kmという距離は、これまで積み重ねてきたトレーニングの単なる通過点じゃないですか。壁だと思って意識すると、体も自然と硬くなって脚が止まってしまいます。節目の数字にこだわらずに、まだ行ける、まだ行けると信じて走ってみたらどうでしょう。ダメかな、と思った後でも意外に力は残っているものですよ。あとは気持ちの持ち方次第です!」

 そ、そうか…! 壁を作っているのは自分自身だ、というMさんの言葉に、背中から甲羅が…ではなく、目からウロコが落ちるカメ子。確かにそうかもしれない。よし、次は無心でがんばってみよう。

 そんな気合いのもと、迎えた次の週の自主トレ。

 この日は、十分に睡眠をとり、体調も万全。気温も下がって空気はカラッと乾燥し、走るための好条件がそろっていた。いつものように7分40~50秒/kmくらいのペースを保ちながら、2km、3kmと順調に距離を伸ばしていく。前回、真鍋コーチに指導されたフォームのポイント、「腕振りで肘をしっかり引くこと(前に出しすぎないこと)」と「体幹をクシャッと曲げずにピンと保つこと」(詳しくは「8kmラン+スピード走でトレーニングも『夏仕様』」)に意識を集中して走る。

 暑さでバテてしまった前回とは違い、今日は涼しい空気が味方をしてくれた。順調なペースで距離を伸ばし、1時間が経過。さらに10分ほど走り、時計を見ると、9kmに到達していた。おおっ久しぶりの9km! うれしい半面、8kmを超えて走れたのは久しぶりなので、さすがに全身が疲れてきたのを感じる。「十分がんばったから、今日は(も)10kmでいいかな…」。そんな思いが頭をよぎる。

 いやいやいや、壁はない! その先まで行ける!

 Mさんの言葉を思い出し、「壁はない…まだ行ける…」と呪文のように唱えながら、ひたすら無心で走り続けるカメ子。その結果…

 なんとか12kmまで走ることができました! \(≧∇≦)/

 タイムは1時間34分02秒。平均ペースはなんと、この距離を走っても7分50秒/kmと、8分を切ることができた。すごい…!! 気持ちの持ち方次第で、距離ってこんな風に伸びるものなんだ。単純なカメ子は、Mさんの暗示のおかげで久々に大きな達成感を味わうことができたのだった。ただ、体は正直。初めて走る距離だっただけに、その後はぐったり疲れてしまった。

第33週から37週までの自主トレ記録
[画像のクリックで拡大表示]

カメ子、読者ランナーと駅伝を激走!

 12kmを走破した翌週のトレーニングは、変則バージョンとして、Goodayの読者ランナーの方々と一緒にチームを組み、「企業対抗駅伝」に参加した(詳しくは「企業対抗駅伝 2015 東京」参戦! 連動企画「駅伝のたすきをつなぎ切り、全チーム見事完走!」)。

 駅伝に出るのは初めてのカメ子。普段は自分の好きなペースで走ればいいし、止まってしまっても誰にも迷惑はかけない。ところが、今回は駅伝。1人5km×5人でチームを組み、タスキをつながなければならない!!

タスキを受け取って、いざ!(写真:村田わかな)

 このプレッシャーは思いのほか大きかった。企業の仲良しチームが集まったお祭り的なイベントかと思っていたが、ふたを開けてみれば、「短距離走か?!」と思うほどの本気モードの高速ランナーがたくさん。その気合いに面喰い、チームメイトとなった読者ランナーの皆さんに迷惑をかけまいと、第三走者としてタスキを受け取ったカメ子、無我夢中で爆走!

 荒川河川敷のどこまでも続く(かに見える)一本道を、平均6分22秒/kmという、普段の練習ではありえない“超ハイペース”で、最後はヘロヘロになりながらなんとか5kmを完走し、タスキをつなぐことができた。タイムは31分56秒(それでも記録はチーム最下位…ご迷惑をおかけしましたm(_ _)m)。

 限界近くまでスピードを上げ、普段とは違う筋肉の使い方をしたため、レース翌日は全身疲労で歩くのもつらく、トレーニングを始めたばかりの頃をほうふつとさせる「廃人状態」に…。ゆっくりペースで10km走る方がずっと楽だったかも、と思いつつ、たまにはスピードを追求する走りもいい刺激になるな、そして誰かと一緒に1つのチームで走るって楽しいな、と思ったカメ子でした。

 次回は真鍋コーチと一緒に、坂道ありの公道ラン10kmに挑戦します!

真鍋未央(まなべ みお)さん
ランニングアドバイザー
真鍋未央(まなべ みお)さん

福岡県出身。高校時代、中・長距離の陸上選手として活躍し、卒業後は資生堂ランニングクラブに所属。同クラブ在籍中にマラソンに転向。ベストタイムは2時間55分27秒(2006年1月29日大阪国際女子マラソン)。現在は、ランニングアドバイザーとして女性向けのセミナー、ランニングイベント「miobiRun」を定期的に開催するほか、TVや雑誌など各種メディアで活躍している。公式ブログはこちら
著書『週1回のランニングでマラソンは完走できる!』(池田書店)
(写真:村田わかな)