スタートと同時に、集団がワッと前に動いた。最後尾付近はややスローペースながらも、あっという間に周りのランナーの背中が遠ざかっていく。
は、速い!!Σ(゚д゚;)
それもそのはず。カメ子が普段走っている8分/kmのペースは、あくまでもフルマラソン完走を目指したペースだが、3kmのレースに出る人たちは、3kmで力を出し切る前提で走る。当然といえば当然だが、カメ子とは完全にペース配分が違っていたのだ。
「タイムは気にせずに大会を楽しんで!」(真鍋コーチ)
そんなメッセージをもらっていたにもかかわらず、どんどん遠ざかる周りのランナーを見た瞬間、遠い昔のマラソン大会の記憶が頭をよぎった。そして、自分の中で何かのスイッチが入った。
ビリには… ビリにはなりたくなーい!!
真鍋コーチというペースメーカーが不在な中、完全に大会の雰囲気にのまれてしまったカメ子、前のランナーの背中を追いかけ、どんどんペースを上げていく。
いかん、このままじゃ後半バテてしまう…!と思いながらも、どうしてもペースを落とす勇気が出ない。手元の時計を見ると、7分/kmという、(カメ子的には)“大暴走”と言ってもいいくらいのハイペースで走っていた。
「まだいける、これなら完走できる」
これがアドレナリンの力なのだろうか。そのままするするっと1km地点を通過。早くも折り返してきた先頭集団とすれ違いながらも、前方のランナーの背中を目標に、7分/kmをキープしたまま、走ることに集中する。すると、少しペースが落ちてきたランナーとの距離がじわじわと縮まり、1人、また1人と抜いていく。ちょっと気持ちがいい。
1.5kmほど走ったところで折り返し地点を通過。よし、あと半分だ。ペースは意外にもまったく落ちず、息も切れていない。折り返したことで精神的にも楽になり、「まだいける、これなら完走できる」という自信が湧いてくる。「がんばってー!」という大会スタッフの声援を受けながら、ひたすら走る。
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