浅草から銀座へ、走っているのに歩いているのと同じ速さ…
雷門の前を曲がり、目の前にそびえ立つ東京スカイツリーを仰ぎ見ながら、ようやく、銀座に向かって折り返した。ここからは、走れば走るほど銀座に戻っていく。そして、反対側の車線には、まだ続々と浅草に向かっていくランナーの姿が見える。自分の後ろにまだこんなに大勢のランナーがいると思うと、少しほっとする。
「もう3分の2が終わったぞ! ここからあと14kmだ。練習で走った距離だから、途方もない距離じゃないだろう?」(ドS元編集長)
「はい!」(カメ子)
そう返事はしたものの、28km走って息も絶え絶えになりながらの、残り14km…。な、長い…。
ここから、脚がますます言うことを聞かなくなり、歩いては走り、歩いては走り、の繰り返しになった。しかも、歯を食いしばって走っているつもりなのに、隣を歩いているランナーと、ほとんど速さが変わらない…(-ω-;)
「いっそのこと、残り全部歩いてもいいかな…。歩いている人、いっぱいいるし…」
疲れの余り、そんな思いが頭をよぎるカメ子。だが、まだ先は長い。ここから歩いたのでは、関門でひっかかってしまうかもしれない。それだけはイヤだ。少しでも、走らないと…。
29km付近。道路の中央分離帯で、真鍋コーチに2回目のストレッチをしてもらった。このころになると、道のあちこちで脚を止めてストレッチをするランナーの姿が目に留まる。そんな中、まるでテレビ番組のチャリティーマラソンランナーのような手厚いケアを受けるカメ子。ありがたいと同時に、周りのランナーに申し訳ない気分になる。そしてまた、ヨロヨロと走り出す。
両国の30km関門(30.0km)の通過タイムは4時間33分03秒(ネットタイムは4時間17分43秒)。関門制限タイム(4時間46分)まで残り13分というタイミング。だいぶ差が縮まってしまった。
ストレッチで止まった時間が何度もあったため、直近5kmのラップは54分39秒と、11分/kmに近いペースまで落ちていた。この頃、各ランナーの位置がリアルタイムで分かる大会のWebページを見ていた同僚や友人は、あまりの減速っぷりに、リタイアしてしまうのでは…とハラハラしていたようだ。
ここから銀座まで、あと4km。銀座まで帰れば、また友人・家族に会える。がんばろう。そう自分を奮い立たせるが、実際には、一歩踏み出すごとに、脚の筋肉が悲鳴を上げる。果てしなく続く道。いくら走っても景色がちっとも変わらない気がする。
遠い… 銀座が遠いよ…
この4kmは、このレースで一番つらく苦しい4kmだった。もう、何も考えられない。ただ、ひたすら脚を前に出し続ける、それだけ…。