日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > 医療・予防  > 世界初のiPS細胞利用した再生医療、移植手術が成功
印刷

世界初のiPS細胞利用した再生医療、移植手術が成功

 高橋厚妃=日経バイオテク

出典:日経メディカル 2014年9月13日(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

会見した理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダー。

 理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらは2014年9月12日、滲出型加齢黄斑変性を対象とした自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シートの移植手術を行った。iPS細胞から作製した組織を使用した再生医療の実施は、これが世界初の事例である。

手術を行った先端医療センター病院の眼科統括部長を務める栗本康夫氏、同病院の病院長である平田結喜緒氏と高橋氏が手術終了後に、神戸市内のホテルで会見を行った。手術では多量の出血や、重篤な有害事象の発生は確認されず、成功に終わったという。

 被験者は70歳代の女性。1.3mm×3mmのRPEシート1枚を、手術の条件に合致した被験者の右の眼球の網膜下に移植した。手術を行った栗本氏は、「RPEシートの移植の安全性や視機能への影響を客観的に評価するのは、手術してから1年の観察期間が必要だと考えている」と話した。

 網膜に存在する黄斑部は、視力に関わる機能を持ち、正常ならへこんだ形状をしている。加齢黄斑変性(AMD)のうち、日本人に多いタイプと言われる滲出型AMDは、網膜の下部に存在するRPEが加齢により劣化し、異常な血管(新生血管)が新しく作られることで、黄斑部を押し出す形で変性させてしまう。新生血管から漏出する血漿成分や、出血で網膜が傷つき、視力の低下が起きる。

 現在の治療法は、抗血管新生薬である抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療などが挙げられるが、新生血管を抑制するだけで傷ついたRPEを修復することはできない。そこで、被験者の網膜下に存在する新生血管や傷ついたRPEを除去し、その場所に自家iPS細胞由来のRPEシートを移植するのが今回の手術だ。

「治療として確立するにはあと10年かかると考えている」

 手術の難しさについて栗本氏は、「被験者は、既に抗VEGF治療を18回受けている病巣の大きい患者だ。新生血管が癒着していて除去しにくいことと、取り除く際の大量出血の可能性があることを予想していた。実際に少し癒着があり、病巣を大きく取り出すのに少し苦労したものの、想定していた範囲だった」と話した。

 また、「手術前には、ブタやサルの目で手術のシミュレーションを何度か行った。実際手術を行ってみると、RPEシートはちり紙のように弱く、その扱いが難しかった。RPEシート移植手術は、標準的な教育を受けた医師が執刀できるようなものが望ましい。網膜下にシートを設置する手技の改善が必要だと感じた」と話した。

 高橋氏によれば、今後安全性を確認するための臨床研究の予定人数は5人としている。「今秋、再生医療等の安全性の確保等に関する法律が施行されることで、今後の臨床研究を申請し直す必要がある。法律改正後は、再生医療の臨床研究は医療機関から申請しなければならないが、現在は理研からの申請となっている。いずれにせよ、今回の1人で臨床研究を止めることはせずに、続けたい」と語った。予定している5人のうち、何人分の細胞が用意できているのかという質問には「それはまだ答えられない」とした。

 高橋氏は「今回の臨床研究は、あくまで安全性の確認であり、治療として確立するにはあと10年かかると考えている」と語った。

この記事は、日経メディカルからの転載です。

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • もの忘れと将来の認知症の関係は?

    「名前が出てこない」「自分が何をしようとしたのか忘れる」…。“もの忘れ”は、ミドル以上なら誰にでも経験があるもの。本特集では、もの忘れの原因は何なのか、将来の認知症につながるのかなどについて紹介する。

  • 健康寿命を左右する「全粒穀物と食物繊維」の摂取方法

    今、世界的に「全粒穀物」の健康効果が注目されている。全粒穀物の摂取が増えるほど、がん、心血管疾患、総死亡率が低くなるという研究報告も出ている。その健康効果の中核となっているのが「食物繊維」だ。食物繊維が体にいいことはよく知られているが、主に便通などに影響するものと軽視されがち。だが、食物繊維不足は生活習慣病と密接な関係がある。本特集では、主食の選択が及ぼす健康効果から、注目の大麦の健康効果、穀物以外の食物繊維のとり方までを一挙に紹介する。

  • 「胃がん」撃退のため知っておきたい最新情報

    これまで多くの人の命を奪い、「死の病」であった胃がんが、「ピロリ菌」除菌の登場によって未然に防ぐことができる病気になってきた。また、万が一胃がんになってしまった場合も、胃カメラによる検診を定期的に受けていれば、超早期の段階で見つけて治療し、胃の機能をほとんど損ねることなく日常生活に戻ることができる。本特集では、近年死亡率が大きく減少している胃がんの最新事情をまとめる。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2018 Nikkei Inc. All rights reserved.