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まつ毛を伸ばし濃くする睫毛貧毛治療薬が登場

自由診療下での提供、1本2万円前後が相場

 小板橋律子=日経メディカル

出典:日経メディカル 2014年10月30日(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 睫毛(しょうもう)貧毛症治療薬グラッシュビスタ(一般名ビマトプロスト)が、今秋、発売された。同薬剤は、緑内障・高眼圧症を適応で2009年に承認されたルミガンと同じ有効成分からなる薬剤だ。緑内障・高眼圧症治療薬として開発中に、副作用としてまつ毛の成長作用が見つかり、睫毛貧毛症治療薬として開発された。

 グラッシュビスタは、まつ毛が不足している、または不十分な状態にある睫毛貧毛症を対象とする。加齢などにより生じる特発性の貧毛に加え、円形脱毛症などの基礎疾患に由来するもの、抗癌剤などの投与による薬物誘発性の脱毛症が対象と考えられている。

 これまで、国内の美容関連のクリニックでは、ルミガンを適応外使用したり、医師が海外から個人輸入した薬剤を用いたまつ毛の治療が行われていたが、それらのクリニックにおいて、未承認薬からクラッシュビスタへの切り替えが、現在、進んでいるようだ。

 グラッシュビスタには薬価は付いておらず、自由診療下で提供される。医療機関により価格は異なるが、70日間使用する1本(5mL)を2万円前後で提供する医療機関が多い。

 「日本人女性の約8割は、自身の現在のまつ毛に満足していないとの調査結果がある。加齢とともにまつ毛は細く、短くなる傾向があることから、まつ毛の成長を促進する同薬剤へのニーズは高いだろう」と、東京ミッドタウン皮膚科形成外科Noage院長の今泉明子氏は語る。効果については、「1カ月で効果を実感する患者さんもいるようだが、他覚的にまつ毛の伸びが分かるまでには、4~6カ月程度継続して使用する必要がある」と説明する。

写真1◎ グラッシュビスタ(提供アラガン・ジャパン)
専用ブラシ(アプリケータ)に薬剤を1滴落とし、染み込ませて使用する。
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写真2◎ グラッシュビスタの投与法
専用ブラシで上睫毛の生え際に目頭から目尻方向に向けて1日1回塗布する。
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東京ミッドタウン皮膚科形成外科クリニックNoageの今泉明子氏は、「癌化学療法後の患者さんでは、まつ毛がほぼなくなってしまうが、この治療により元の状態に戻るのが早くなる」と語る。

 国内で行われた臨床試験の結果では、ビマトプロスト投与開始2カ月後から改善を自覚する被験者が有意に増加しており、4カ月後には、8割弱でまつ毛の長さ・濃さが改善していた(図1)。

 同薬剤がどのような機序でまつ毛の成長を促進しているのかその詳細は不明だが、毛周期における成長期を延長することで成長を促進すると考えられている。まつ毛は頭髪と比べて成長期が短く、頭髪が2~6年の成長期を有するのに比べて、まつ毛の成長期は1~2カ月と考えられている。加えて今泉氏は、「休止期から成長期への移行を促進している可能性もある」と語る。

 海外で行われた臨床試験において、副作用の発現率は約25%だった。主な副作用には、結膜充血、眼瞼掻痒、眼瞼紅斑、点状角膜炎、皮膚色素過剰などがある。ビマトプロストは、付着部位に色素沈着を生じるなど、適正に使用しないと副作用を生じるリスクがある。グラッシュビスタには、薬剤を上眼瞼辺縁部の睫毛基部に塗布する専用のブラシ(アプリケータ)が添付されており、不要な部位への薬剤付着を防ぐ工夫がされている(前ページ写真1、2)。

 まつ毛は生え替わるため、使用を中断すれば、伸びたまつ毛はまた短くなる。今泉氏は、「中止後2カ月程度は効果が持続していると感じるかもしれないが、それ以上中断するとまつ毛が抜け、短くなるだろう」と話す。まつ毛を長くした場合は基本的に継続して使用する薬剤との認識だ。

図1◎ 特発性睫毛貧毛症における睫毛の変化(承認時評価資料、図2とも)
睫毛の長さや太さなどから4段階で評価(GEA-Jスケール)したところ、投与開始2カ月後から有意差が認められた。GEA-Jスケールで2以上の改善を示す患者もビマトプロスト群で有意に多かった。
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癌化学療法後の患者のQOL向上に貢献か

 グラッシュビスタは、癌化学療法後の睫毛貧毛症も適応としている。

 「化学療法後の患者さんでは、まつ毛がほぼ全て脱毛した状態。そのような患者さんに投与することで、まつ毛の成長を促進し、通常の状態に早く戻すことができる」と今泉氏は説明する。化学療法後の患者では、通常、以前のまつ毛の状態に戻るまで1~1.5年ほど掛かるが、同薬を使用することで、化学療法開始前のまつ毛の状態に戻るのを半年以上早める効果があるという。

 化学療法後の患者を対象とした臨床試験では、投与開始4カ月後には、ビマトプロスト群とプラセボ群に有意な差が生じていた(図2)。

 同薬剤は、癌化学療法後、4週間以上経過してから投与を開始することが望ましいとされる。「それより早く始めると、逆に脱毛を促進しかねない」(今泉氏)ためだ。「ほぼ全てまつ毛が抜けた状態では、付けまつ毛をすることが難しいと聞く。同薬剤により癌患者さんのQOL向上が期待される」と今泉氏。また、化学療法後だからといって発生頻度が高まる副作用は特にないという。

図2◎ 癌化学療法後の睫毛貧毛症における睫毛の変化
36例を対象。ビマトプロスト群18例には1日1回4カ月間塗布した。GEA-Jスケールで1以上改善した患者の割合。
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この記事は、日経メディカルからの転載です