LDLコレステロール
LDLコレステロール
(下表参照)

脂質異常症の状態が続くと、とくに心臓に酸素や栄養を与えている冠動脈の動脈硬化を促進し、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)が発症しやすくなるため、日本動脈硬化学会では、以下のような〈リスク別脂質管理目標値〉を設定している。
*絶対リスクとは、NIPPON DATA80による今後10年間の冠動脈疾患による死亡確率のこと。年齢、性、LDL-C(またはTC)、血圧、喫煙の有無別で判定。
糖尿病(耐糖能異常は含まない)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)、慢性腎臓病(CKD)のいずれかの合併がある場合は、それだけでカテゴリーⅢとする。
(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012』より)
高値が続くと動脈硬化に
コレステロールはリポ蛋白(→参照)の中で、HDLとLDLに多く存在します。LDLは末梢組織にコレステロールを運搬する役割を、HDLは末梢組織の余ったコレステロールを肝臓に運搬する役割をもっています。このため、HDL中のコレステロールは「善玉」コレステロール、LDL中のコレステロールは「悪玉」コレステロールとも呼ばれています。
このLDLコレステロールは動脈硬化の重要な危険因子で、高値が続くと冠動脈疾患(狭心症、急性心筋梗塞(こうそく))や脳梗塞などの動脈硬化性の病気の原因になります。
厚生労働省により平成20年から導入された「特定健診・特定保健指導」でも、LDLコレステロールは総コレステロール(→参照)にかわって、測定項目の1つとなっています。これは日本動脈硬化学会が、総コレステロールではなくLDLコレステロールこそが動脈硬化の危険因子であることを確認した結果です。
検査前12時間以上は絶食
LDLコレステロールは食事や飲酒の影響を受けるため、検査前12時間以上は絶食、禁酒・禁煙します。また、検査前日の夕食は、高脂肪食や高カロリー食を控えめにしてください。
脂質管理目標値
LDLコレステロール値が140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症、120~139mg/dlを境界域LDLコレステロール血症といいます。
LDLコレステロールの値は、トリグリセリド(中性脂肪;TG、232頁)が400mg/dl未満の場合は、「LDL-C=TC-HDL-C-TG/5」というFriedewaldの式で計算します。TGが400mg/dl以上の場合は「上記で求めた値+30mg/dl」とします。LDL-Cを直接測定する方法もありますが、現在のところ信頼性が確立されていないため、上記の式で求めることになっています。
LDL-Cの管理目標値は、表に示したように一次予防としてのカテゴリーⅠ~Ⅲと二次予防に分けられ、生活習慣の改善と、場合によっては薬物療法も加えて目標値を目指します。
ちなみに、表中にあるnon HDL-Cとは、すべての動脈硬化惹起性リポ蛋白中のコレステロールのことで、LDL-Cの管理目標値に30mg/dlを加えたものです。TGが400mg/dl以上や食後採血の場合の指標として使われます。
◆高値→家族性高コレステロール血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群など
◆低値→肝硬変、甲状腺機能亢進症、無(低)βリポ蛋白血症、低栄養など
▲医師が使う一般用語:「エルディーエル」もしくは「エルディーエルコレステロール」