腰椎穿刺検査(脳脊髄液検査)
ようついせんしけんさ(のうせきずいえきけんさ)

髄膜炎やクモ膜下出血などの診断に行う検査
脊髄(せきずい)は、脳幹から腰へと伸びているひも状の組織で、脳と脊髄は頭蓋骨や脊柱という骨によって守られています。この組織と骨の間に流れている透明な液体を、脳脊髄液あるいは髄液といいます。
腰椎穿刺(せんし)は、この髄液を腰部の脊髄腔(くう)に針を刺して調べる検査で、激しい頭痛や嘔吐(おうと)、発熱などの症状があって脳や髄膜の変化が疑われたとき、すなわち髄膜炎や脳腫瘍、クモ膜下出血などの診断をするときに行います。
また、虫垂炎の手術のときに行う腰椎麻酔も腰椎穿刺で行います。
髄膜炎では髄液の圧が上昇
細菌やウイルスが髄膜に感染して髄膜炎をおこすと、正常圧70~180mmH2Oの髄液圧が200mmH2O以上に上昇します。
髄液中の細胞数も増加し、原因が細菌では多核球、ウイルスではリンパ球が増えています。
髄液中の糖の値も重要で、細菌性では細菌による糖の分解で、糖の数値が減少します。ウイルス性では減少していません。
両手で両膝を抱えて検査
左側臥位(そくがい)になり、両膝頭を腹部につくように曲げ、両手でその両膝を抱えます。頭は前胸部に寄せ、腰を後ろに突き出してエビのような格好になります。この姿勢は、針を刺す椎間腔(ついかんくう)が広くなり、いちばん穿刺しやすい格好になるので重要です。第3、第4腰椎間を穿刺します。
姿勢ができたら、穿刺する部位を消毒し、局所麻酔薬を注射します。チクッとした痛みはありますが、すぐに麻酔が効き、局所の痛みは感じなくなります。穿刺針が入ってくるとき、痛みはありませんが、圧迫される感じはあります。穿刺針が神経に触ると足がビリッとします。
脊髄腔に針先が入ったら髄液の圧力を計り、細胞数や蛋白、糖を測定するため、5~6mlの髄液をとります。圧を測定したり髄液を採取するとき、痛みはありません。検査は5~6分で終了します。検査後、枕をしないで1~2時間、上向きで安静にしています。
症状があったら医師に伝える
検査当日の飲食は普通にとってかまいません。検査後、頭痛や頸(けい)部痛、背部痛、腰痛、複視などの症状が出る場合があります。一般に数日以内に回復しますが、なんらかの症状がみられたら医師に伝えてください。
髄膜炎では、治療中(2~3週後)に治ったことの確認のため、腰椎穿刺の再検査を行います。検査は、繰り返し行っても危険はありません。
《正 常》 |
[液 圧]70~180mmH2O |
[外 観]水様透明 |
[細胞数]0~5/mm3(おもにリンパ球) |
[ 糖 ]50~75mg/dl |
[蛋 白]10~40mg/dl |
《細菌性髄膜炎》 |
[液 圧]上昇 |
[外 観]水様透明~混濁 |
[細胞数]高度上昇(おもに多核球) |
[ 糖 ]減少 |
[蛋 白]上昇 |
《ウイルス性髄膜炎》 |
[液 圧]上昇 |
[外 観]水様透明 |
[細胞数]上昇(おもにリンパ球) |
[ 糖 ]不変 |
[蛋 白]軽度上昇 |
《クモ膜下出血》 |
[液 圧]高度上昇 |
[外 観]血性~黄 |
[細胞数]軽度上昇(おもにリンパ球) |
[ 糖 ]減少 |
[蛋 白]高度上昇 |
◆髄膜炎→頭部CT、MRなど
◆脳腫瘍→頭部CT、MR、PET-CT、頭部血管造影、眼底検査など
◆クモ膜下出血→頭部CT、MRなど
▲医師が使う一般用語:「ルンバール」=lumbar puncture(腰椎穿刺)のlumbarから