しょっちゅうトイレに行きたくなる、ふとしたはずみに漏らしてしまう、夜中にトイレのために起きる…。そんな尿の悩みを、実に多くの中高年が抱えています。尿の悩みは人に相談しづらく、「ある程度の年齢になれば仕方のない」と諦めている人も少なくないでしょう。この連載では、誰もが悩んでいる尿トラブルについて、症状に合わせた対策や治療を医師が解説していきます。
今回は、特に悩んでいる人が多い「頻尿」「尿漏れ」について、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授の高橋悟さんがその実態を解説します。

尿の悩みを「単なる老化現象」で片づけてはいけない
「頻繁にトイレに行きたくなる」「急に尿意を感じて、トイレに駆け込む」「ふとしたはずみに尿が漏れてしまう」「排尿後に尿がジワッと漏れてズボンにシミができることがある」「夜中にトイレのために目が覚めてしまう」
中高年になると、こうした「頻尿」や「尿漏れ」などの尿トラブルを経験する人が増えてきます。日本排尿機能学会が2002年に40歳以上の日本人を対象に実施した調査では、日中に8回以上トイレに行く人は2人に1人、夜中に1回以上トイレに行く人は3人に2人という結果になっています(*1)。
尿にまつわる不調やトラブルはそれほど身近である一方、人にはなかなか相談しづらく、受診もためらいがちです。「ある程度の年齢になれば仕方のないこと」とあきらめてしまっている人も少なくありません。
しかし、頻尿や尿漏れは加齢が原因の一つとなってはいるものの、単なる老化現象ではありません。頻尿や尿漏れはれっきとした病気であり、症状に合わせたセルフケアや治療を行うことで改善が期待できます。
頻尿や尿漏れを放置していると、徐々に悪化していきます。尿トラブルが気になって仕事に集中できなくなったり、外出を控えるようになったりと、QOL(Quality of Life:生活の質)の低下にもつながります。また、尿トラブルの中には、膀胱(ぼうこう)がんや前立腺がんなど、命に関わるような別の病気が隠れていることもあります。頻尿や尿漏れで悩んだり困ったりしているなら、怖い病気を見つけるためにも早めに対処することが重要です。
頻尿・尿漏れといってもさまざまなタイプがあるので、まずはその種類や特徴を知っておきましょう。