しょっちゅうトイレに行きたくなる、ふとしたはずみに漏らしてしまう、夜中にトイレのために起きる…。そんな尿の悩みを、実に多くの中高年が抱えています。この連載では、誰もが悩んでいる尿トラブルについて、症状に合わせた対策や治療を医師が解説。今回は、順天堂大学大学院医学研究科・泌尿器外科学教授の堀江重郎さんが、尿を作り出すなど人間の体で重要な役割を果たす「腎臓」の働きや、腎臓に関連する主な病気、腎臓を長持ちさせるポイントについて解説します。

尿はどのようにして作られる?
前回は、健康のために自分の尿の状態を観察するポイントや、尿から分かる病気のサイン、尿に関連する主な病気について解説しました。では、その尿はどのようにして作られるのでしょうか。
尿は、腎臓で作られます。腎臓は、腰よりも少し上のあたりに、背骨を挟んで左右1つずつある臓器です。大きさは握りこぶし程度で、そら豆のような形をしています。
尿の原料となるのは血液です。血液には、全身の細胞に栄養素や酸素を届けると同時に、体内で生じた老廃物や有害物質を回収する働きがあります。腎臓は、血液をきれいにして、不要なものを体外に排出するための尿を作り出しているのです。
血液が腎臓に流れ込むと、腎臓内の「糸球体」という器官でろ過されます。糸球体は、細い毛細血管が毛糸玉のように丸まってできていることからそう呼ばれます。1つの腎臓に約100万個の糸球体があるといわれ、精密なふるいの役割を果たしています。
糸球体で血液がろ過されるときには、血液の細胞やたんぱく質は残されて、老廃物や有害物質、アミノ酸やブドウ糖、ナトリウムなどのミネラル(電解質)が水分と一緒にこし出されて、尿のもとになる「原尿」が作られます。
原尿はその後、「尿細管」を通って腎盂(じんう)に集められます。尿細管を通るときには、原尿に含まれるアミノ酸やブドウ糖、ミネラルなど体に必要な成分と水分が再吸収されて血液に戻され、その残りがほぼ尿になります。
尿になるのは原尿のわずか1%程度で、約99%は再吸収されています。腎盂に集められた尿は、さらに尿管を通って膀胱へと流れていきます。ここで、膀胱に必要な物質が回収されたあと、最終的な尿となります。
