しょっちゅうトイレに行きたくなる、ふとしたはずみに漏らしてしまう、夜中にトイレのために起きる…。そんな尿の悩みを、実に多くの中高年が抱えています。この連載では、誰もが悩んでいる尿トラブルについて、症状に合わせた対策や治療を医師が解説していきます。今回は、女性医療クリニックLUNAグループ理事長の関口由紀さんが、女性の尿トラブルの背景について解説します。

尿トラブルの最大の要因は「骨盤底筋群」の傷みやすさ
中高年になると、男女ともに増えてくる尿漏れや頻尿などの尿トラブル。ただ、女性は男性よりも比較的若いころから、尿トラブルを起こしやすい背景があります。その最大の要因となるのが、「骨盤底」を構成する筋肉群(以下、骨盤底筋群)です。
骨盤底は、恥骨から尾骨の間にある菱形状のプレートで、筋肉や筋膜、靭帯、皮下組織などで構成されています。そのうち、骨盤底を構成する筋肉が骨盤底筋群です。骨盤底の役割は、膀胱や直腸、子宮などの骨盤内の臓器を支えるほか、排泄を司る役割を担っています。尿が漏れそうになると、骨盤底筋群が収縮して尿道を閉鎖し、尿漏れを防いでくれるのです。

女性はもともと男性よりも筋肉量が少なく、骨盤底筋群には男女共通の肛門・尿道に加えて、女性特有の膣も貫通しているため、傷みやすくなっています。また、骨盤底筋が遺伝的に弱い女性もいて、その場合には子宮の発達にともない10代から骨盤底筋が傷み始めることもあります。