若きがん患者が問う「来年死ぬとしたらやること」を今しているか?
中山 祐次郎
医師で本を書く方は少なくありませんが、小説となると珍しいと思います。中山さんが小説を書こうと思ったきっかけは何だったんでしょうか。
中山:それは、山下弘子さんとの出会いがきっかけですね。19歳でがんになって、『それでも君は医者になるのか』にも書いたように、残念ながら3年前に亡くなってしまった方なんですけど。知り合ったときにはすでに闘病していて、富士山に登るから一緒に登ってくれる医者を探している、というのが出会いでした。抗がん剤治療をしているのに富士山に登るという、とんでもないことをしたわけです。それは小説のモチーフにもなったのですが。

A君:『走れ外科医』ですね。読みました。
中山:ありがとうございます。その山下さんが、『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』を読んでくれて、こんな感想を僕に投げかけてきたのです。この本には、自分がいつか死ぬということについて真剣に考えて、「自分の生き方はこれでよいのか」と自問自答してほしい、そして自分の心からの本音に従って生きれば、自分が迎える最期のときの後悔や無念が減るんじゃないか、と書いているんだけれども、「あなた自身は本当にそうしているの?」と。
ほかの人にこんなことを言われたら、「もちろんやってるよ」と答えたと思うんですけど、19歳で肝臓がんになって、その後ずっとがん治療をしている彼女に言われると、ズシンときました。自分は本当に、「来年死ぬとしたら今年やること」をやっているのだろうか、と。2週間ずっと、毎日考え続けました。
考えに考えて、ついにたどり着いたのは「小説が書きたい」ということでした。これが、小説を書くきっかけですね。
研究医は臨床医より給料が低い?
そうだったのですね。山下弘子さんは、この連載(日経ビジネス電子版)でも登場しています。さて、せっかくの機会ですから、ほかに中山さんへ質問はないですか?
C君:僕は、新しい薬などについて研究がしたいと考えていたので、ネットで研究医について調べたりしていました。すると、研究医のほうが臨床医より年収が低かったりして、医者になるときに臨床医を選ぶ人が多い、と書かれていたんです。やはり、安定という意味では臨床医のほうがいいのでしょうか。
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