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一介の外科医、日々是絶筆

若きがん患者が問う「来年死ぬとしたらやること」を今しているか?

 中山 祐次郎

中山:自分が担当している患者さんが亡くなるというのは非常に苦しい体験で、できれば経験したくない。ただ、私はがんを専門にしているので、残念ながらそういうことは一定の割合で起きます。そのたびにがっくり落ち込みますし、そういうときに仲間とお酒を飲みに行って話をするお医者さんもいます。コロナ禍ではあまりそういうことはできませんが。

 患者さんが亡くなるということは、医者にとっても、いつも親しく話をしていた人が死亡するということです。ですから、この悲しみと寂しさについては、残念ながら慣れるものではないかもしれません。ただ一方で、医者は科学者でもあるので、自分たちのとった治療の作戦はこれでよかったのだろうかなどと検証し、反省します。そしてそれを次の患者さんに生かすのです。

 あともう1つ、私の場合は、物語に昇華させることで、悲しみや寂しさを乗り越えているのかもしれません。もちろん、患者さんのストーリーをそのまま使うわけじゃありませんが。「表現とは自己救済である」という言葉を言われたこともあります。なるほど、と思いました。僕は自分を救うために書いているのかもしれません。

現役外科医が小説を書こうと決意したきっかけとは

A君:中山さんの初めての著書『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』の後書きに、「生と死について書きたい」という思いがある、と書かれていました。いつごろから本を書こうと思うようになったのでしょうか。

中山:本を書こうと思うようになったのは、医者になってからですね。本は子供のころから好きで、メジャーな小説はよく読んでいて、中学3年のころは医者か小説家になりたいと思っていたぐらいです。

 でも、年に1回発行される聖光学院の生徒の文章を集めた冊子「聖光芸苑」に、僕の文章は一度も載らなかったんです。同級生は短編小説のようなものを載せていたのに。だから自分の文才ではものを書いてメシを食うのは難しいだろうと思っていました。

 ところで、A君も何か書きたいと思っていますか?

A君:僕は、文章を書くというよりも、絵を描くほうですね。最近は力を入れて絵を練習するようになりました。

中山:おお、そうなんですね。続けていくといいと思います。

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