学年ビリだった僕が医者になった理由
中山 祐次郎
憧れの医者になるための勉強は苦労しても楽しい
話は変わりまして、中山先生の医学生生活はどうでしたか?
中山:大学時代は、正直、夢のようだったと言ってもいいぐらい楽しかったです。僕は、生まれ育った神奈川県を離れ、鹿児島県に行きました。もしかしたら、外国のほうが文化的には近いんじゃないかというぐらい、遠いところです。
最初はすごく戸惑って、一度は鹿児島を“拒絶”しました。地元の大学の医学部に行けなかったことに対する屈折した気持ちがあったのかもしれません。芋焼酎もクセがあって最初ぜんぜん飲めなくて、「なんでこんな接着剤みたいなのをみんな飲んでるんだろう」と。
でも、僕のほうから少しずつ鹿児島に対して心を開いていったら、芋焼酎もおいしくなって、思いっきり青春を謳歌できるようになりました。勉強はもちろん量が多く苦労しましたが、憧れの医者になるための勉強だったので、やっぱり楽しかったですね。
医学部の勉強では、覚えなければならないことがたくさんある、と聞いたことがあります。
中山:山ほどあります。暗記科目もありますよ。例えば解剖学では、全身の筋肉と神経と骨の名前を、英語とラテン語と日本語で覚えたりするんですけど、それでも楽しいんですよ。
3人はまだ大学生活まではイメージできていないと思いますが、どうですか?
A君:そうですね、医学部志望者向けのイベントに参加したりはしていますが、まだ大学生活までは具体的に考えていないです。
中山:大学は楽しいですよ。高校とはまったく違っていて、ある日突然、金髪にしたっていいし、着物で学校に行ったっていい。僕もよく浴衣とかで大学に行ってましたよ。浮いていましたけれど。たぶん、高校時代や受験勉強の抑圧からの解放だったんです。
あと、医学生は「スチューデント・ドクター」として、白衣を着てお医者さんの仕事を実習としてやってみる機会があります。内科、外科、耳鼻科といった病院にある全ての科を回って、仕事内容だけでなく、科の雰囲気や、どういうキャラの先生がいるか、どういう生活を送るかまで分かるので、自分が科を決める参考になりますね。
中山先生はいつ外科に行こうと決めたのですか?
中山:僕は大学の6年生ぐらいですね。最近は、研修医になってから決めることが多いと思います。よくいわれるのが、学生のときにここに進みたいと思った科と、研修医になって現場で働き出してから進みたいと思う科が変わる人がすごく多いということです。面白いことに。現場を見ると興味が変わりますし、自分の向き不向きも分かるからでしょう。
この連載が本になりました!

現役の外科医であり、小説家の顔も持つ中山祐次郎さんの連載「一介の外科医、日々是絶筆」が、大幅な加筆・修正を経て本になりました!
コロナ禍で医師という職業に注目が集まり、大学医学部の志望者が増えるといわれるなか、「医者の世界」の実像をうそ偽りなく、かつ面白く書いた意欲作です。
今、医者になる意義とは何なのか。医者は本当に尊い仕事なのか。患者の死とどう向き合うのか。コロナ診療はやはり命がけなのか。医者の給料は本当に良いのか。婚活では売り手市場なのか……。
「医者の世界」に興味がある方や自分の子供が医者志望の方、シリーズ38万部を突破しドラマ化もされた『泣くな研修医』(中山祐次郎著)に感動した方も必読です!
[日経ビジネス電子版 2021年11月19日の記事を転載。過去の連載記事はこちら]
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