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一介の外科医、日々是絶筆

新型コロナ第4波の「地獄」を見た医師、「本当に怖いのは人間」

 中山 祐次郎

誇張ではなく「ただただ地獄」

中山:やっと第3波が終息したのもつかの間、すぐに第4波がやってきました。特に大阪では感染者数が爆発的に増え、重症者があふれて大ピンチだったのではないかと思います。その頃の「大阪の地獄」と呼ばれるお話を教えてください。

倉原:決して誇張するわけではなく、ただただ「地獄」でした。当院は55床での運用でしたが、ほぼ満床でフル稼働していました。大阪府の「医療逼迫(ひっぱく)」が始まったのは、2021年4月上旬からです。このころから、重症病床が満床になりました。これは何を意味しているかというと、軽症中等症病床で気管挿管しても、重症病床が引き受けてくれないということです。つまり、療養型病床であろうと集中治療医がいない病院であろうと、自施設で人工呼吸器を装着してCOVID-19患者を診切らなければなりません。

大阪の重症患者数の推移(倉原優氏作成)
大阪の重症患者数の推移(倉原優氏作成)

 図の黄色の部分が、転院できなかった重症患者さんです。5月4日には、全重症患者数が449人、そのうち転院できないのが94人にまで到達しました。大阪府のICUベッド数が610余りですから、これはもう医療崩壊と言ってもよいでしょう。待機手術(緊急手術ではない、計画的に行う手術)を止めないとICUが回らなくなる水準ですね。私はちょうどゴールデンウイーク中のコロナ当番だったので、4日連続で気管挿管することがあり、アドレナリンがずっと出ている状態で診療していました。

 自宅療養中のCOVID-19患者さんが救急車を要請しても、どこも引き受けられない事案が出始めました。こちらとしても診てあげたいのですが、軽症中等症病床の看護というのはマンパワーが限られています。そのため、人工呼吸管理が必要な患者がズラっと並んでいる状態では、看護師の人手が足りないがゆえに引き受けできなかったのです。

急激に酸素飽和度が低下し、気管挿管に至る

中山:お話を伺って、本当に大変な状況だったのだろうと身震いしました。気管挿管という、医師にとって非常に感染リスクの高い行為を日常的にしなければならなかったと思います。その頃はどんなストレスがありましたか。

倉原:まず、挿管に至る予測が難しかったです。普段私たちが経験するARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、細菌感染症などが原因によって呼吸不全が起こるものが多く、そろそろこの人は挿管だなぁという予測が立てられていました。しかし、COVID-19はその常識が通用しません。朝元気だったにもかかわらず、夜に電話がかかってきて緊急で挿管になったこともありました。

 新型コロナ肺炎の怖いところは、両肺すりガラス陰影になっている患者さんでも、当初はSpO2(酸素飽和度。体内の酸素濃度のこと)が比較的保たれているところです。それから恐らく肺胞腔(くう)内に滲出(しんしゅつ)液が出始め、換気できなくなる肺胞が指数関数的に増えることで、急激にSpO2が低下するのだろうと理解しています。

 他院で挿管中に感染した医師をコロナ病棟で診ていたこともあったので、自分も感染したらやばいなと思ったこともありますが、第3波、第4波と経ていくにつれて、(感染対策がしっかりした)コロナ病棟では意外と感染しないことが分かってきました。看護師も挿管の介助に慣れてきていました。ですので、第4波のときよりも、実はコロナ病棟を立ち上げて間もない第2波あたりのほうが怖かった、というのが正直なところです。

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