『泣くな研修医』著者、外科医の子育て、意外なスキルが役立つ
中山 祐次郎
私がやれることの1つに、赤ん坊をお風呂に入れるというものもありました。キッチンで、片手でベビーを支えつつ、あいた手で体を洗い、お湯をかけていく。利き手ではない方で赤ん坊を支えたり、細かいところを洗ったりするのは難しいものです。
これは数少ない、外科医スキルが日常に役立つシーンですが、私はどちらの手でも利き手と同じレベルで器用なので、最初からスムーズに洗うことができました。
「子育てを一切しない」医師もやはりいる
普通、外科医の職場は「病院に長時間いればいるほど偉い」という一昔前の文化が残っていることが多いのですが、私のところは幸いそうではありませんでした。
職場の同僚や上司はありがたいことに、仕事をさっさと切り上げて早い時間(つまりは定時の午後5時ごろ)に病院を飛び出す私に、何も言いませんでした。
ただ、70歳近い先生と話していて「最近は子育てで眠い日々でして」と言ったら「ハッハッハ、私のように『子育てを一切しない』という選択肢もありますぞ!」と言われたときには驚きましたが、そういう時代もあったのですね。
同僚の外科医にも、たまたま0歳児、1歳児の父が多かったのですが、育児や家事をしている人としていない人は、話を聞いていてわかりました。あるとき「オムツってけっこう高いのな」という話をしたら、「ですよね!」と言うドクターがいる一方で、「すいません、僕一度もオムツ買ったことがないので」と言った人もいました。
コロナ禍は、感染の危険が高くなければ、出張と飲み会が減る分、家にいる時間を増やすことができ、メリットさえ感じていました。
こんなふうにして、僕はなんとか「お手伝い」ではないレベルを目指して育児・家事をしていたのです。
[日経ビジネス電子版 2021年5月7日の記事を再構成。過去の連載記事はこちら]
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