生活習慣病を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。今回は糖尿病に直結する「血糖値」について教えていただこう。健康診断では空腹時血糖値やHbA1cを調べるが、それぞれどのような意味があるのか。血糖値が上がるとき、体の中ではどんなことが起きているのだろう。血糖値が上がるメカニズムを知れば、それを防ぐ対策も見えてくるはず。カギを握るのは「インスリン」だ。

こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。今回は血圧やコレステロールとともにメタボ(メタボリックシンドローム)の項目に入っている「血糖値」についてお話ししたいと思います。健康診断では必ず調べますよね。普通は空腹時血糖値か随時血糖値を調べますし、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を見るところも多いです。これらの数値が高いと「糖尿病」と診断されることはご存じでしょう。ではそもそも「血糖」とは何か、というところから説明しましょう。
空腹時血糖は、食後10時間以上のときの血液100cc中のブドウ糖の量

血糖とは文字通り、血液の中を流れているブドウ糖のことです。検査したそのときに流れている100cc(=1dL)中に何mgのブドウ糖が入っているかを見ています。
そのうち「空腹時血糖値」は、食後10時間以上たった血液100cc中に、どれくらいのブドウ糖が含まれているか、「随時血糖値」は食後10時間経過していないときの血液中にどれくらいブドウ糖が含まれているかを表しています。つまり、血中のブドウ糖を必要以上に残さず、きちんと処理できているかどうかを見ているということです。
ちなみに、食後2時間の時点で血液中にどれくらいブドウ糖が残っているかは糖尿病の診断にも使われるため、食後2時間の血糖値を区別して「食後血糖値」と呼ぶこともあります。
ちなみにコーヒーやお茶にもわずかに糖質が含まれているので、厳密に言うと、それらも含めて、検査前の10時間は水しか飲まないで検査するのが、本当の「空腹時血糖値」ということになります。
このうち、健診結果では主に「空腹時血糖値」と「HbA1c」の2つをもとに糖代謝機能を評価するので、今回はその2つについてお話ししましょう。
