メタボリックシンドローム(メタボ)を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。コレステロールと中性脂肪の違い、食事の注意点などを説明した前回に続き、今回はコレステロールが高いことで動脈硬化を進める仕組みと、なぜ高いコレステロールを放置してはいけないかについて教えていただこう。「コレステロールは水アカのように血管の壁にこびりつく」「それを、血液の中を流れてきた薬の成分が溶かして血管をきれいにする」というイメージを抱いているとしたら、それは間違いなので認識を新たにしたほうがいい。

こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。前回に続いて、血液の中を流れているあぶら、すなわち「コレステロールと中性脂肪」についてお話ししたいと思います。
コレステロールや中性脂肪の数値が基準値を超えていたら「脂質異常症」という生活習慣病と診断されますが、前回も触れたように脂質異常症は4つのタイプに分けられます。LDLコレステロールが多い「高LDLコレステロール血症」(140mg/dL以上)、HDLコレステロールが少ない「低HDLコレステロール血症」(40mg/dL未満)、善玉(HDL)以外の総コレステロールが多い「高non-HDLコレステロール血症」(170mg/dL以上)、中性脂肪が多い「高トリグリセライド血症」(150mg/dL以上)です。

このうちの一つ、例えばLDLコレステロールが基準値を超えているだけでも脂質異常症と診断されます。昔は「高脂血症」と呼ばれたことを覚えている方も多いでしょう。その名前だとHDLコレステロールが低いタイプが含まれなくなるので、2007年から脂質異常症と呼ぶようになりました。ご存じの通り、脂質異常症になると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中を発症したり、死亡したりするリスクが高くなります。