生活習慣病を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。今回からは具体的なケースを例に取り、その対策や、そこから分かる生活習慣病予防のポイントを教えていただこう。第1回は「典型的なメタボ」だった50代男性のケース。ダイエットをして短期間で体重を落としたが、すぐにリバウンド。体重そのものは最初とあまり変わっていないが、血糖値や血圧などの数値が大幅に悪くなってしまったという。

こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。これから何回かは特定健診の結果が気になる方たちの典型的な例を紹介しつつ、それぞれの対策や、そこから分かる生活習慣病予防のポイントについてお話ししていきたいと思います。今回は「リバウンドでメタボ(メタボリックシンドローム)が悪化した53歳男性のケース」にフォーカスします。
<ケース1>
リバウンドしたら、最初のときよりも血糖値や血圧が悪くなった
53歳男性のAさんは、もともとメタボで、2年前の特定健診の結果でもそれは明らかでしたが、翌年の健診の前に、一念発起して糖質制限ダイエットを行いました。
最初の健診時、つまりダイエット開始前の体重は85kgで腹囲は85cm以上(メタボの基準に該当)。血圧は、上(収縮期血圧)が137mmHgで下(拡張期血圧)が88mmHgと、高血圧の診断基準(日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン;上140mmHg以上、かつ/または下90mmHg以上)よりはやや低いものの、治療ガイドラインで「高値血圧」に該当する値。血糖値も、糖尿病と診断されるレベルではないものの、耐糖能異常が疑われる空腹時血糖値120mg/dL、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.1%でした。
さらに、中性脂肪は300mg/dL台(基準値は150mg/dL未満)、LDLコレステロールも160mg/dL以上(基準値は140mg/dL未満)。肝機能も、ASTとALTは40台(U/L)、γ-GTPは150(U/L)と、いずれも基準値を超える、脂肪肝が疑われる数値で、完全にメタボリックシンドロームに該当する状態でした。
一念発起して食事を中心とした生活改善に励んだかいがあって、わずか1~2カ月で減量に成功し、次の特定健診では体重が4kg減に。腹囲はまだ85cmありましたが、体重が減った効果として、血液検査の数値も改善し、ASTが18、ALTが17、γ-GTPも152から113に、HbA1cも5.6%に下がりました。
ところが、そこからリバウンド。最初の健診から2年後の健診では体重が前年に比べ5kg増加、つまりダイエット開始時点よりも1kg増えてしまいました。腹囲は97cmまで増加、血圧も上がって「高血圧」と診断されるレベルに。ALTは30台、γ-GTPは150台に戻り、中性脂肪も400mg/dL近くまで上がっていました。Aさん自身もショックを受けたのは血糖値。空腹時血糖値が126mg/dL、HbA1cが6.7%で、立派な「糖尿病」になってしまったのです(日本糖尿病学会糖尿病診断基準)。さらに、心電図にまで「異常が出ている」と指摘されました。
