高血圧の原因はいろいろ。減塩すると血圧が下がることが知られているが、実はタイプによって効果が表れやすい人と表れにくい人がいるという。メタボリックシンドローム(メタボ)を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを解説する本連載。今回はそれぞれのタイプに応じた高血圧の対策を解説していただこう。

こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。前回、前々回に続き、成人の2人に1人が該当する高血圧についてお話ししたいと思います。今回のテーマは「高血圧のタイプ別対策」です。
これまでにもお話ししてきたように、高血圧の原因は1つではありません。いろいろな原因で血圧は上がります。細かく挙げていくときりがないのですが、大きく「循環血液量が増えるタイプ」と「末梢血管の抵抗が強くなるタイプ」の2つに分けることができます。高血圧の対策として「減塩」が広く知られていますが、これは特に前者に効果的です。同じように減塩をやっても、効果が出やすいタイプと出にくいタイプがあるのです。

まず循環血液量が増えるタイプでは、心臓から押し出す力が必要になって血圧が上がります。これはメタボリックシンドローム(メタボ)の人によく見られるタイプです。内臓脂肪が増えると、大きくなった脂肪細胞からTNF-α(アルファ)などインスリンの効きを悪くする生理活性物質が出てきます。すると、「うまく血糖をコントロールできないのはインスリンが足りないせいだ!」と体は判断し、インスリンが追加で分泌されるようになります。
この状態は「高インスリン血症」と呼ばれ、この状態は、腎臓の尿細管でのナトリウムの再吸収(*1)を促進します。一度捨てるはずだったナトリウムをまた引き戻すんですね。すると結果的に血液中のナトリウム濃度が上昇し、それを薄めるために血液中に水分が引き込まれてくる。その結果、血液量が増えるのです。
このようにメタボの人は血中のナトリウム濃度が高くなりがちなので、減塩することで血中のナトリウム濃度をコントロールでき、降圧効果が高いのです。メタボで高血圧の場合は、内臓脂肪を減らすことに併せて、減塩も降圧効果が出やすいことを覚えておきましょう。
また、肥満気味の糖尿病の予備群の人、つまり耐糖能障害がある人も、インスリンがたくさん出るので高インスリン血症になって循環血液量が多くなっていきます。従って、糖尿病や糖尿病予備群の人、そして、腎機能が低下してeGFR(腎臓が老廃物を排泄する能力を示す数値)が下がってきている人も、ナトリウムをうまく出せなくなっているので減塩が効きます。
もう1つ、人には食塩摂取により血圧が上がる食塩感受性がある人と、食塩を摂取しても血圧が上がりにくい食塩非感受性の人(食塩感受性がない人)がいます。そして、食塩感受性がある人も、ナトリウムの排泄が非感受性の人と比べると遅れるので、血液中のナトリウム濃度が上がって血圧が上がりやすくなります。