私たちの体には、年齢とともに体力の低下、目の不調、痛みや不具合など、さまざまな「老化現象」が現れます。この連載では、これらの老化現象を「衰え」ではなく「変化」としてポジティブにとらえ、上手に付き合っていく術を、これまでに延べ10万人以上の高齢者と接してきた眼科専門医の平松類先生が解説します。今回のテーマは「緑内障」です。
40代の会社員Aさんが、同期入社のBさんに話しかけています。
A「最近なんだか疲れている感じだけど、大丈夫か?」 |
B「ああ、いろいろミスのフォローをしてもらって悪いな」 |
A「どうしたんだよ。入社以来の仲だろう? 何かあったら相談してくれよ」 |
B「そうだよな…実は、緑内障になって治療しているんだよ」 |
A「緑内障…か。聞いたことはあるんだけど詳しくは知らなくて…すまないな」 |
B「まあ、分かりにくいよな。また今度詳しく話すよ」 ![]() |
日本人の失明原因第1位、なのによく知られていない緑内障
毎年6月7日は「緑内障を考える日」とされていて、ニュースなどでも多少取り上げられています。これとは別に世界緑内障週間というものが3月にあり、1週間ほど各地の眼科などの施設が緑色にライトアップされていました。
しかし、あまり気にも留めなかったという人が多いのではないでしょうか? 多くの人にとって緑内障は、「聞いたことはあるが、どんなものかはよく知らない」病気なのではないでしょうか? なかなか一般に知られていない、それにもかかわらず日本人の失明原因第1位となっているのが緑内障です。
目が見えなくなるというのは怖いもので、目は大切と思っていても、実際に目を大切にする行動はなかなかとっていないものです。緑内障は、40歳以上の20人に1人が持っていると言われます。「そんなにいるの? 身近で見たことがない」――そういう人も多いかもしれません。緑内障はなかなか自分で気づきにくい病気なので、実際に病気であることを認識して病院に通っている人は患者全体の10%程度だという報告があります(*1)。
それに加えて、多くの緑内障の患者さんは「周りの人に緑内障だとなかなか言えない」ということがあるようです。脂肪肝や高血圧などは、よく知られた病気であまり深刻にとらえない人が多いため、日常でも人に言いやすいものです。けれども緑内障というと「深刻にとる人」もいれば、「なんだかよく分からないという人」もいます。そのため、相手の反応を読みにくく、なかなか言い出せないでいるのです。
もしかしたらあなた自身が緑内障かもしれませんし、あなたの家族や仲間の誰かが緑内障かもしれません。では、緑内障とはどういう病気なのでしょうか?