睡眠中に唾液が気管に入り肺炎に! 「誤嚥性肺炎」の恐怖
肺炎を正しく恐れる(4)
大谷義夫=池袋大谷クリニック院長
呼吸器のスペシャリストとして肺炎と向き合って30年。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは、新刊『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)で、コロナから私たちの命と健康を守る方法を徹底的に解説します。
自身のクリニックで毎日のように新型コロナ感染疑いの患者を診察し、その豊富な臨床経験をもとに、テレビ等での分かりやすい情報発信でも定評のある大谷さん。この連載では、『肺炎を正しく恐れる』の内容をもとにしつつ、本では書ききれなかったエピソードも盛り込んでお届けします。今回は、「誤嚥性肺炎」がなぜ怖いのかについて。
細菌が原因で起きる肺炎にも注意!

前回、コロナ肺炎においても「誤嚥(ごえん)性肺炎」が重要になってくる局面がある、というお話をしました。今回は、誤嚥性肺炎について、さらに深堀りしていきます。
現在は、新型コロナウイルスによる肺炎に注目が集まっていますが、それ以前は、肺炎といえばウイルスよりも細菌の感染によって起こるもののほうが一般的でした。
一般に、細菌性肺炎の典型的な症状は、咳、痰(黄色や緑色の痰)、発熱、胸の痛み、息苦しさの5つ。これが5大症状と考えられます。それぞれの症状は風邪でも起こりますが、肺炎の場合は風邪よりも症状が重いのが特徴です。発熱も3日以上続き、咳も1週間以上(治療が遅ければ2週間以上)続くことが多いのです。
発熱や咳などの症状の重さが、細菌性肺炎かどうかを見極めるための1つのポイントになるわけですが、免疫力の落ちている高齢者の場合、この法則がそのまま当てはまるわけではありません。

高齢者の細菌性肺炎の特徴は、風邪と症状がよく似ていることです。肺炎になってもあまり熱が出ないことが多く、本人も家族も風邪と勘違いして肺炎と気づかないのです。そして放置しているうちに、重症化することがあるので油断できません。
一般に、若い人が肺炎にかかると38℃以上の高熱が出ますが、高齢者でそこまで熱が出ることは少なく、通常は37℃台にとどまってしまいます。それは、高齢になると体の免疫機能が低下するためです。免疫力が高い若い人は、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、防衛反応が適切に機能して高熱が出るのですが、高齢者は免疫力が低下しているため、そこまで高熱にならないのです。
このため、肺炎にかかっていても、少しだるい、咳が長引く、食欲低下といった程度の症状で、本人は風邪が長引いているだけと思っていることも多かったりします。私がクリニックで実際に患者さんを診ている印象では、70歳以上の方で「風邪だと思う」と言って受診してきた場合、半分くらいは肺炎になっています。
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