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睡眠中に唾液が気管に入り肺炎に! 「誤嚥性肺炎」の恐怖

肺炎を正しく恐れる(4)

 大谷義夫=池袋大谷クリニック院長

「ゴックンテスト」でのど年齢をチェック

 高齢者の肺炎の中でも、特に多いのが誤嚥性肺炎です。前回も解説したように、誤嚥とは、飲食物、唾液、あるいは逆流した胃液が食道ではなく、気管や肺に入ってしまうことを指します。

 誤嚥するようになる大きな理由は、のどの筋力の衰えと唾液の分泌が減ること。そこで、のどの老化度をチェックするための検査が、「ゴックンテスト」です。クリニックを受診した350人以上の患者さんに協力してもらった結果、加齢に比例してのどの嚥下機能(飲み込む力)が落ちていくことが分かりました。

 「ゴックンテスト」のやり方は簡単。まず、水を一口飲んで口の中を湿らせます。それから、30秒間で何回唾液を飲み込めるか数えましょう。

[画像のクリックで拡大表示]

 ちなみに、このように唾液だけを飲み込むことを「空嚥下(からえんげ)」と呼びます。唾液を飲み込むときはのど仏が上下に動くので、指をのど仏の周辺に当てておくと数えやすいので試してみてください。

睡眠中、本人が気づかない誤嚥が起きる

 誤嚥性肺炎が危険なのは、「本人が気づかない誤嚥」が多いためです。一般に誤嚥というと、食べ物や飲み物が気管に入ることが問題だと思う人が多いでしょう。テレビで誤嚥性肺炎が取り上げられたときに「高齢者がこんな食べ物を誤嚥してしまった」という画像を見たことがあるかもしれません。しかし実際には、そうしたケースは多くはないのです。

 本人が誤嚥しているのに気づいている場合、「顕性(けんせい)誤嚥」と呼ばれます。こうした顕性誤嚥も問題なのですが、実際に多いのは本人が気づかない誤嚥である「不顕性誤嚥」、いわゆる「隠れ誤嚥」です。

 夜、睡眠中などに口腔内細菌を含む唾液や逆流した胃液が気管に流れ込んで、気づかないうちに誤嚥を起こし、これが肺炎につながっているのです。口の中には肺炎球菌や歯周病菌がいるので、免疫力が低下しているとこれらが原因となって肺炎を起こしてしまいます。

 また、動脈硬化から起こる「ラクナ梗塞(こうそく)」も、嚥下反射や咳反射が衰える原因になっており、これが隠れ誤嚥を起こす原因にもなっています。

 ラクナ梗塞は、いわば小さな脳梗塞で、一般に日常生活に影響を及ぼすことはないといわれています。検査などで見つかっても、「加齢によるものなので心配ありません」などと言われることが多いのですが、実は嚥下反射や咳反射に影響することが明らかになっています。

 脳の中の、大脳基底核(きていかく)という場所にラクナ梗塞ができると、嚥下反射や咳反射の機能が低下してしまうのです。

 つまり、誤嚥性肺炎を防ぐためには、ラクナ梗塞を予防することも大切。そのためには、動脈硬化の予防、すなわち高血圧や脂質異常症など生活習慣病の改善も重要になってくるといえます。

(イラスト:堀江篤史)

肺炎を正しく恐れる

大谷義夫 著

新型コロナウイルスによる肺炎は、これまでとは何が違うのか。
なぜ、一気に悪化してあっという間に亡くなる人がいるのか。
肺炎を避け、予防するにはどうすればいいのか――。
呼吸器内科医として肺炎と向き合って30年。テレビにもたびたび出演する、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんが徹底的に解説する一冊。

大谷義夫(おおたに よしお)さん 池袋大谷クリニック院長 呼吸器内科医
大谷義夫(おおたに よしお)さん 2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。米国ミシガン大学に留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の呼吸器内科の患者数を誇るクリニックに。呼吸器内科のスペシャリストとしてテレビ等で情報発信を行う。著書に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』など多数。最新刊は『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)。

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