コロナ感染でも「誤嚥性肺炎」に注意しなければならない理由
肺炎を正しく恐れる(3)
大谷義夫=池袋大谷クリニック院長
呼吸器のスペシャリストとして肺炎と向き合って30年。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは、新刊『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)で、コロナから私たちの命と健康を守る方法を徹底的に解説します。
自身のクリニックで毎日のように新型コロナ感染疑いの患者を診察し、その豊富な臨床経験をもとに、テレビ等での分かりやすい情報発信でも定評のある大谷さん。この連載では、『肺炎を正しく恐れる』の内容をもとにしつつ、本では書ききれなかったエピソードも盛り込んでお届けします。今回は、なぜコロナの肺炎においても「誤嚥性肺炎」の予防が重要なのかについて。
なぜ日本では「肺炎」で亡くなる人が多いのか

前回、「家庭内感染を防ぐ方法」について紹介しました。今回は、コロナとはまた違う「誤嚥(ごえん)性肺炎」についてです。
現在、多くの人が関心を持っているのは、新型コロナウイルスによる肺炎だと思いますが、実は、コロナ肺炎においても誤嚥性肺炎が重要になってくる局面があるのです。
誤嚥性肺炎については、聞いたことがある人も多いでしょう。例えば、「ブルーライトヨコハマ」や「また逢う日まで」など、昭和を代表する歌謡曲を数多く生み出した作曲家の筒美京平さんは、今月7日、誤嚥性肺炎のため亡くなりました。お悔やみ申し上げます。
日本では、誤嚥性肺炎で亡くなる方が増えています。厚生労働省の『人口動態統計2018』によると、2018年に誤嚥性肺炎で亡くなったのは3万8460人で、死因別に見ると第7位です。
なお、誤嚥性肺炎以外の肺炎で亡くなる方は9万4661人で、死因別では第5位。すべての肺炎を合わせると13万3121人で、これは死因別の3位に相当します。
日本では非常に多くの方が肺炎で亡くなっており、その種類別で見ると、特に比率が高いのが誤嚥性肺炎というわけです。
現代の日本は、人口に占める高齢者の比率が世界一の超高齢社会で、100歳を超える長寿も珍しくありません。健康に気を使う人が増え、喫煙率も年々下がっています。
そこに医学の進歩も加わった結果、昔のようにがんや心疾患で簡単には亡くならなくなったのは喜ばしいことです。ところが、その一方で、肺炎で命を落とす人が増えているのはなぜでしょうか。
がんや心疾患などの大病を克服した高齢者だけでなく、大病せずに長生きしてきた高齢者でも、「最期は肺炎」というケースが増えているのです。
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