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コロナ感染でも「誤嚥性肺炎」に注意しなければならない理由

肺炎を正しく恐れる(3)

 大谷義夫=池袋大谷クリニック院長

「誤嚥性肺炎」は日本人の“最後のハードル”

大谷義夫著『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)

 肺炎そのものは昔からある病気で、決して新しいものではありません。戦前はがんや心疾患よりも肺炎のほうが多かったはず。それが、医学が発達した現在、どうして肺炎が猛威を振るっているのでしょうか。不思議に感じる人もいるかもしれません。

 その原因こそが、「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は、健康長寿を目指す日本人に立ちはだかる“最後のハードル”なのです。

 誤嚥とは、食べ物や飲み物、唾液、逆流した胃液などが、本来なら口からのどと食道を通って胃に送られるはずが、誤って気管に入ってしまう状態のこと。そして、誤って気管から肺に入った飲み物や唾液などに含まれる病原体によって起こる肺炎のことを、誤嚥性肺炎と呼びます。

 誤嚥性肺炎は、新型コロナウイルスによる肺炎においても問題になります。というのも、新型コロナが原因のウイルス性肺炎の治療中に、2次性の細菌性肺炎を生じることが多く、治療のために抗生物質を投与することも多いのです。特に高齢者の場合は、新型コロナの肺炎のときにも、治療中の誤嚥により細菌性肺炎が2次的に生じることが多いというわけです。

 ちなみに、高齢者がインフルエンザになったとき、肺炎を併発することが多いのですが、その場合、必ずしもインフルエンザウイルスが原因で肺炎になるわけではありません。インフルエンザになって免疫力が低下したことで、肺炎球菌などの細菌が侵入しやすくなり、肺炎を引き起こすことのほうが多いのです。

のどを鍛え、ワクチンも活用する

 誤嚥性肺炎の原因となる病原体は、肺炎球菌や歯周病菌など、口の中にいる細菌がほとんどです。なぜ誤嚥が起こるのかというと、それは、年を取ってのどの筋力が低下することと密接に関係しています。

 誤嚥性肺炎にかかる人が増えるのは主に60代以降ですが、誤嚥そのものは40代から始まります。実際、多くの方は、20~30代の頃は、食事中に食べ物や飲み物が気管に入って、むせたり、咳き込んだりしたことはほとんどなかったでしょう。それが40代になると、むせるケースが増えてくるのです。私自身、40代の頃、診療の合間にカレーを急いで食べようとしたときに、初めて誤嚥を経験しました。

 食事の際にむせたり咳き込んだりすることこそ、のどの老化が始まり、誤嚥しやすくなり始めたサインなのです。こうしたサインを無視して、何も対策をとらないでいると、徐々に飲み込む力が落ち、さらに誤嚥しやすくなります。

 食べ物を胃に送る際に、のどの筋肉を瞬時に動かして、ごっくんと飲み込む機能(嚥下機能)を保つことは、どれだけ元気に長く生きられるかに密接に関わってくるのです。

 嚥下機能を保つためには、のどを鍛えることが大切です。このほか、誤嚥性肺炎の予防法については、拙著『肺炎を正しく恐れる』にて詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。

 また、誤嚥性肺炎の原因として多い「肺炎球菌」には、ワクチンもあります。このワクチンを活用すれば、誤嚥性肺炎のリスクを下げられるだけでなく、万が一、新型コロナの肺炎になったときの重症化リスクの低減にもつながるでしょう。

 肥満や、がん、糖尿病、呼吸器や腎臓の病気などがある人は、コロナのリスクが高いと言われています。そういった方こそ、肺炎球菌ワクチンをぜひ検討してみてください。

 次回は、誤嚥性肺炎についてさらに深堀りしていきます。

(図版制作:増田真一)

肺炎を正しく恐れる

大谷義夫 著

新型コロナウイルスによる肺炎は、これまでとは何が違うのか。
なぜ、一気に悪化してあっという間に亡くなる人がいるのか。
肺炎を避け、予防するにはどうすればいいのか――。
呼吸器内科医として肺炎と向き合って30年。テレビにもたびたび出演する、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんが徹底的に解説する一冊。

大谷義夫(おおたに よしお)さん 池袋大谷クリニック院長 呼吸器内科医
大谷義夫(おおたに よしお)さん 2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。米国ミシガン大学に留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の呼吸器内科の患者数を誇るクリニックに。呼吸器内科のスペシャリストとしてテレビ等で情報発信を行う。著書に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』など多数。最新刊は『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)。

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