日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > からだケア  > Gooday Books  > 地頭は伸ばせる! 最新の科学が出した結論を気鋭の脳医学者が解説  > 2ページ目
印刷

Gooday Books

地頭は伸ばせる! 最新の科学が出した結論を気鋭の脳医学者が解説

 瀧靖之=東北大学教授

:おお、そうなんですね。子供にどうやって努力を続けてもらうのかという問題はさておき、勇気がもらえる話です。でも、これってアタマの軟らかい成長期の子供だけですよね? 大人はもう、脳が成長する余地なんてないでしょう。

:いえ、大人の脳だってちゃんと成長することができるんですよ。

:本当ですか? 中高年でも?

:はい。大人の脳でも刺激を与え続ければ、成長することができます。このように、外部からの刺激に対して変化する力があることを「可塑性(かそせい)がある」というのですが、大人でも子供でも人間の脳にはちゃんと可塑性が備わっているのです。

何歳になっても脳の一部では神経細胞が新しく作られる

:驚きました。脳の神経細胞の数は大人になってからは減っていく一方だと聞いていたので。まさかそんな力があるとは。

:実は、人間の脳にある約1000億個の神経細胞(ニューロン)の一部は、年齢を重ねても細胞分裂して新しく作られることが分かったんです(*2)。「海馬」という部位ですね。

:不思議だなぁ。海馬というのは、どんな役割があるんですか?

:海馬は脳の側頭葉の奥深くにある、タツノオトシゴみたいな形をした部位で、「記憶の倉庫番」の役割を担っています。外部から入ってきた情報を一時的に記憶して(短期記憶)、その後も覚えておくべきかどうかを判断します。保存しておいた情報を思い出すのも海馬の働きです。

 子供の睡眠時間と海馬の体積の関係を調べてみたところ、8~9時間寝ている子供は5~6時間しか寝ていない子供よりも、海馬の体積が大きかったことが分かりました(*3)。また、大人ではうつ病になると海馬が萎縮することがありますし(*4)、アルツハイマー型認知症になるとまず海馬が萎縮していきます(*5)。

脳の神経細胞は大人になってからは新しく生まれることはないと考えられてきたが、少なくとも記憶をつかさどる「海馬」は何歳になっても神経細胞が新生していることが近年分かった(画像=123RF)
脳の神経細胞は大人になってからは新しく生まれることはないと考えられてきたが、少なくとも記憶をつかさどる「海馬」は何歳になっても神経細胞が新生していることが近年分かった(画像=123RF)

:海馬、めちゃくちゃ重要じゃないですか。でも、海馬以外では大人になると神経細胞が死んでいく一方なのですよね。だったら、どうやって大人の脳に変化する力があるのですか?

:これは大人でも子供でも同じですが、脳が情報を処理するためには神経細胞同士が神経伝達回路(シナプス)でつながって複雑なネットワークを構築します。シナプスが結びついていくことで脳の体積が増えていくのです。子供の脳はネットワークを作るスピードがものすごく速い。一方大人は、それよりは時間がかかるものの、脳に刺激を与え続けることで既存のネットワークを強化したり、新たなネットワークを広げたりすることができる、ということが分かってきました。

:すごいですね。それが分かってきたのって最近なのですか?

:わりと最近です。2004 年に科学雑誌「Nature」に掲載されたドイツの大学の研究チームが行った報告(*6)をはじめ、さまざまな研究(*7)で明らかになっています。

*2 Goncalves J.T. et al., Cell, 167(4):897-914., 2016
*3 Taki Y. et al., NeuroImage, 60(1):471-5., 2012
*4 Taki Y. et al., Journal Affective Disorders, 88(3):313-320., 2005
*5 Coupe P. et al., Scientific Reports, 9:3998., 2019
*6 Schmidt-Hieber C. et al., Nature, 429:184-187., 2004
*7 Dahlin E. et al., Science, 320(5882):1510-2., 2008

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 健康長寿の生命線! 放置は禁物 「腎臓」の異常値NEW

    生命維持に欠かせないさまざまな機能を担っている腎臓は、よほど悪くならない限り悲鳴を上げない「沈黙の臓器」でもある。本記事では、大切な腎機能が失われる前に、異常値にどう対処すればいいか、腎臓を守るためにはどのような生活習慣に気を付けていけばいいかについて解説する。

  • 加齢で進む胃の不調 機能性ディスペプシアと逆流性食道炎の原因と対策

    加齢により胃の機能が衰えると、さまざまな不調が起きる。ピロリ菌の除菌が進んで胃がんや胃潰瘍が減ってきた今、胃の病気の主役は、胃もたれや胃痛の症状を招く「機能性ディスペプシア」と、胸やけやげっぷが起きる「逆流性食道炎」の2つに移行しつつある。なぜ機能性ディスペプシアと逆流性食道炎は起きるのか、どのような治療が必要なのか、セルフケアで改善・予防できるのか。このテーマ別特集では、胃の不調の原因と、それを解消するための対策を一挙紹介していく。

  • 「中途覚醒が多く寝た気がしない」 中高年の睡眠の悩み解消術

    「睡眠の途中で何度も目を覚まし、眠った気がしない」「早朝に目覚めてしまい、その後なかなか寝付けない」――。歳をとるにつれ、そんな「中途覚醒」「早朝覚醒」に悩まされるようになったという人も多いだろう。なぜ中途覚醒は起きるのか。中途覚醒を解消して、若い頃のような「熟睡」を手に入れることはできるのか。このテーマ別特集では、中途覚醒の原因と、それを解消するための対策を一挙紹介していく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.