日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > からだケア  > Gooday Books  > 猛スピードで開発された新型コロナワクチンは、どう効くのか?
印刷

Gooday Books

猛スピードで開発された新型コロナワクチンは、どう効くのか?

『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』より(後編)

 峰宗太郎、山中浩之

 6万部突破のベストセラーとなり、大きな反響を呼んでいる『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』(日経プレミアシリーズ)から、新型コロナワクチンの基礎知識についてお届けする記事の後編です。

 本書は、米国立研究機関のウイルス免疫学者である峰宗太郎先生が、日経ビジネスの編集者である山中浩之(編集Y)を聞き役として、ワクチン接種前に誰もが知っておきたい知識を分かりやすく解説しているのが特徴。今回は、新しい「核酸ワクチン」というタイプである新型コロナワクチンがなぜこんなに早く完成し、どのように効くのかをまとめます。

写真はイメージ (c) Tinnakorn Jorruang-123RF

おことわり:本記事の内容は基本的に書籍が執筆された2020年11月時点の情報に基づいています。当時は新型コロナワクチンの第3相臨床試験結果が発表されたタイミングで、現状よりも確実な情報に乏しかったため、新型のワクチン(核酸ワクチン)については抑制的な表現になっています。

 書籍の重版時に追記をしておりますとおり、峰先生は2021年1月に核酸ワクチンの1つ、モデルナのmRNAワクチンを自ら接種されました。こちらについては日経ビジネス電子版の記事「新型コロナの変異は『当たり前』の話、騒げば騒ぐだけ損」を合わせてお読みください。

遺伝子工学の世界からやってきた新型ワクチン

編集Y 前編では、オーソドックスな製法による「ワクチン3兄弟」のお話を伺ってきましたが、新型コロナ向けのワクチンは、遺伝子工学の世界からやってきた、と。どういうことでしょう。

峰宗太郎先生(以下、峰) これまでは、ウイルスの全部や一部(特にタンパク質)を用意して、体に入れていたわけです。ところが「ウイルスの成分のタンパク質を『ヒトの身体のなかで』作らせてもいいじゃないか」という発想が現れた。ウイルスの一部のタンパク質の設計図に当たるものを打ち込んで、ヒトの体内で作って、免疫系を刺激しよう、と。

『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』(日経プレミアシリーズ)

編集Y ん、どこかで聞いたような……。ヒトの身体のなかで作るって、あっ、つまり、ウイルスと同じやり方をするわけですか? なんだかすごくヤバそうな気がするんですけど、設計図だけ打ち込むメリットは何なのでしょう。

 製造が比較的簡単(工程数が少ない)、管理が比較的容易、コストが安い。量産しやすいし流通もさせやすくなる。これらが大きなメリットです。

 この一例が「ウイルスベクター」という考え方で、遺伝子治療にも使われる先端的な技法なんですね。遺伝子操作などで自己複製能力と増殖力を失わせたウイルスに、患者に欠落している遺伝子を組み込んで、体内で増やそうというものです。

編集Y なんと、まさにウイルスを「データの運び屋」として使うんだ!

 ベクター(Vector)は「運び屋」という意味ですからね。アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症という免疫不全症があるんです。ADAという酵素が体内になくて、免疫が機能不全を起こしてしまう。そういう先天性の疾患の方がいたときに、ADAの設計図を持ったウイルスを感染させれば、身体の中でADAができるはずだ、という発想なんです。実験では、ADAが増えて、症状も消えて、「ああ、これはすごい」となったのですが……。

編集Y が?

 1999年に行われた4例目の新生児が治療から30カ月後に白血病になってしまいます。このADAという遺伝子が、患者の染色体に組み込まれるんですが、「組み込まれた場所」が悪かったんですね。がんに関連する遺伝子を刺激する場所に入ったことが分かりました。こういう事故があって「足りない遺伝子をウイルスで補充する」という遺伝子治療の考え方の実験研究は、いったん足踏み状態になりました。

 そういう経験を踏まえて、ウイルスが持ち込む設計図が、我々の細胞の大事な部分のDNAに組み込まれないようにすれば、安全に同じ効果が期待できるのではないか、と、アデノウイルスというものを使った遺伝子治療が考えられ、そして同じ技法でワクチンが生まれます。ですからワクチンというか、正確に言うとこれは遺伝子治療の一種とも言えてしまいます。

編集Y 「遺伝子治療だけど、ワクチンなんだよ」と言われると不思議な気がしますね。

1/5 page

最後へ

次へ

新型コロナ
キーワード一覧へ

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 強い足腰を維持するための「骨」の強化法

    健康長寿の大敵となる「骨の脆弱化」を予防するには、若いうちから「骨を強くする生活習慣」を取り入れていくことが大切だ。このテーマ別特集では、骨が弱くなるメカニズムや危険因子、骨を強く保つための生活習慣のポイントなどについて解説していく。

  • もの忘れと認知症の関係は? 認知症リスクを下げる生活のポイント

    年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うもの。しかし、「名前が出てこない」「自分が何をしようとしたのか忘れる」といった“もの忘れ”は、中高年になると誰もが経験する。⾃分は周りと比べて、もの忘れがひどいのでは? ひょっとして認知症が始まったのか? と不安になる人も多い。このテーマ別特集では、もの忘れの原因や、将来の認知症にどうつながるのか、認知症を予防するにはどうすればいいのかについて、一挙にまとめて紹介する。

  • 痛風だけじゃない!「高すぎる尿酸値」のリスク

    尿酸値と関係する病気といえば「痛風」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、近年の研究から、尿酸値の高い状態が続くことは、痛風だけでなく、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人が多いが、放置は厳禁だ。本記事では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策をまとめる。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.