日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > からだケア  > Gooday Books  > 猛スピードで開発された新型コロナワクチンは、どう効くのか?  > 5ページ目
印刷

Gooday Books

猛スピードで開発された新型コロナワクチンは、どう効くのか?

『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』より(後編)

 峰宗太郎、山中浩之

 第1の問題点はそこです。「あとは打つだけ」ですが、ヒトでどうなるかは打ってみるまで分からない、広く試されていないテクノロジーに、業界も全世界も前のめりになっている。最先端のエッジに全速力で突っ込んでいるという構図です。

 大きな希望があるとすれば、大量生産などが簡単である、テクノロジーとして原理はよく分かってきている、と、いかにも科学の進歩という面があります。デメリットは安全性も効果もこれからだ、ということです。はっきり言えばこれは新規の大規模な社会的人体実験です。やむを得ないという部分ももちろんあります。社会がそれを求めているのだから、と。

 しかし、科学の視点から行けば、本来20年かけてもおかしくないくらいの検証を思い切りすっ飛ばしている。ワクチンを開発している会社が、言わずもがなの「安全性と個人の健康を最優先する」ことを、あえて声明として出したぐらい“イケイケどんどん”になっているのです。

「90%を超える有効性」の意味は?

編集Y ところで、2020年11月、日本も購入する予定のmRNAワクチン、米ファイザーと独ビオンテックの「BNT162b2」について、「第3相臨床試験の最終解析において、95%の有効性が示された」と発表しています(中間解析では90%)。続いて米モデルナもmRNAワクチンで「94.5%の有効性」があったと発表しています。(※その後両社のワクチンとも米国などで使用が承認されました)

 この95%や94.5%ってどういう意味なんでしょう。そのまま受け取ると「このワクチンを打った人のうち、9割以上が新型コロナにかからなかったんだ」と思うんですが。

 違うんですね。ファイザーとビオンテックの話に絞ると、これは大規模なランダム化比較試験で、偽薬(プラセボ)投与群に対してワクチン投与群でのリスク比が0.05、つまりリスクを比較すると9割5分以上減ったという話なんです。が、たしかに分かりにくいですね。中間解析の段階でのとてもいい記事が「日経バイオテクONLINE」に出ているので、考え方は最終解析でも同じですからこちらを読まれるのがおすすめです。(「久保田文の“気になる現場” 新型コロナワクチンが「90%の有効性」ってどういうこと?」)

編集Y リスク比。

 BNT162b2ワクチンを接種しなかった人たちのうち、86例以上が発症したのに対して、接種した人は8例以下だった(最終解析では162例対8例)。ランダム化という、ワクチン接種の有無以外は同じ条件で揃えた2つの群を比較して、発症するリスクが9割も下がりました、ということです。

編集Y あー、ワクチンを打たなかったら86人以上だったのが、打ったら8人以下に。つまり、全員に新型コロナウイルスを投与してみたら、ワクチンを打った人と打たなかった人で86対8の大差がついたと……

 違います違います。まず、この第3相臨床試験(*1)ではウイルスに意図的に感染させたりしません。「18 歳から85歳の約4万例」を半分に分けて「ワクチンあり」「なし」として、普通に生活してもらって、自然に感染するかどうかを「観察」しているんです。そういう意味では、ワクチン投与については介入研究、感染については観察研究とも言えますね。

*1 ざっくり言うと、第1相試験(臨床薬理試験)は健康な成人を対象に安全性や人体への吸収・排出の特性を確認する小規模な試験、第2相試験(探索的試験)は実際に対象となる人に有効性、安全性、使い方を検討する中規模な試験、第3相試験検証的試験)は実地に近い状態での効果を試す大規模な試験。

編集Y えっ、4万人を病院に閉じ込めてベッドに寝かせて、じゃないんですか。

 いやいや、そんな特殊な状況下では、ワクチンの実際の有効性の試験になりません。この試験デザインの場合、被験者に普段通りの生活をしてもらうことが大事ですね。

編集Y ……ということは、テスト対象者の約4万人のうち、そもそも新型コロナに感染する機会がなかった人が、相当数含まれるだろう、と言うことですね?

 そうです。だからサンプル数を相当多くしないと、そもそも「感染して発症した人」が全然出てこない可能性もあります。今回のテスト期間には感染が一時的に落ち着いた時期がありましたから、自然感染する人が出にくくて、さらに大変だったでしょうね。

新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実

峰宗太郎、山中浩之 著

 Twitterで5万人のフォロワーを持つ米国研究機関在籍の若手ウイルス免疫学者、峰宗太郎先生が、対話形式でとっても分かりやすく、そして時には辛辣に、新型コロナと人間の免疫系、そしてワクチンを巡るさまざまな問題について語ります。
 メディアやネットの情報に踊らされず、パニックを起こさず、冷静に自分の頭で判断するための科学的トピックが満載です。

峰宗太郎(みね そうたろう)さん 医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。病理学、血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。予防医療普及協会顧問。
1981年、京都府生まれ、京都大学薬学部、名古屋大学医学部医学科卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、2018年より米国立研究機関博士研究員。国内外で得たスタンダードな医療知見のもと、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。
山中浩之(やまなか ひろゆき)
1964年、新潟県生まれ。87年日経BP入社。以来、日経ビジネス、日本経済新聞社証券部、日経クリック、日経パソコンなどを経て、現在日経ビジネス編集部でウェブと書籍の編集に携わる

先頭へ

前へ

5/5 page

新型コロナ
キーワード一覧へ
日経グッデイ春割キャンペーン

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 肩の痛みから高血圧まで、「姿勢の崩れ」は様々な不調の原因に

    「姿勢」が、肩こりや腰痛の原因になることを知っている人は多いだろうが、足の痛みや高血圧、誤嚥性肺炎まで、全身の様々な不調・疾患の原因になることをご存じの方は少ないかもしれない。これまでに掲載した人気記事から、姿勢と様々な病気・不調との関係について知っておきたいことをコンパクトにまとめた。

  • あなたも「隠れ心房細動」?! 高齢化で急増する危険な不整脈

    脈の速さやリズムが乱れる「不整脈」。その一種である「心房細動」は、高齢化に伴い患者数が増加しており、潜在患者も含めると100万人を超えると言われている。心房細動の怖いところは、放置すると脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こす可能性があることだ。本記事では、心房細動の症状や早期発見のコツ、治療のポイントなどをコンパクトにまとめた。

  • 変形性膝関節症のつらい痛みを改善する運動とは?

    年を取ると多くの人が感じる「膝の痛み」。その原因で最もよくあるケースが「変形性膝関節症」だ。膝が痛いと外出がおっくうになり、体を動かす機会が減るため、そのまま何もしないとますます足腰が衰えてしまう。だが実は、変形性膝関節症の痛みをとり、関節の動きを改善するために有効なのが、膝への負担を抑えた「運動」なのだ。ここでは、膝の痛みが起きる仕組みから、改善するための運動のやり方までをまとめよう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設 日経Gooday春割キャンペーン

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.