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知っておきたい新型コロナワクチン 基礎の基礎

『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』より(前編)

 峰宗太郎、山中浩之

「なぜ二度かからない?」という疑問がワクチンを生んだ

 寄り道が長くなりましたが、免疫とワクチンの話を続けましょう。

 免疫の研究は仕組みが単純なものから始まりました。天然痘や麻疹は、通常、一度かかると二度かからないことが知られていた。だから二度目を防ぐ何か、そういう仕組みがヒトの身体にはあるはずだという問題意識が生まれた。この「二度なしはなぜ生じるんだろう」という疑問が免疫学の起こりなんですよね。同時に、ワクチンの歴史でもあるわけです。ジョン・ハンターという有名な医者がいて、これはもう超有名な解剖医なんですけれども。

編集Y 『ドリトル先生』のモデルといわれている人だ!

 お、よくご存じで。『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』(ウェンディ・ムーア著)、読みました? 面白いですよ。

編集Y 私からは参考図書として蛇蔵さんのマンガ『決してマネしないでください』(講談社)の1巻を推奨いたします。

 ジョン・ハンターは、初めて歯を人に移植しようとした、などなどエピソードの多い医者ですが、他の人間の歯ではうまく接着しないことを外科医として気づいていたようなんですね。こういう知見が積み重なって、「どうもヒトの身体には拒絶反応があるらしい」ことが分かっていった。いろいろな医学的な実験を実地でしていた人だったんです。そして、ジョン・ハンターの弟子、エドワード・ジェンナーという人が出てきたわけです。

編集Y 出た、ジェンナー。種痘の父。

 ジェンナーは孤児院の子どもたちに種痘を打って、初めて天然痘が防げることを発見したわけです。このときは、まだ病原体は何か、は見えていないわけですから、当然「ワクチンを作ろう」と思っていたわけでもない。

 「一度天然痘にかかると、二度はかからない。ならば、天然痘(または似た病気)に人為的にかからせれば、二度なしで防げるんじゃないか」ということですね。ところが感染させてしまうと、重い病気にかかったり、死んでしまったりするリスクがあるわけです。実際、ジェンナーの時代には、天然痘患者の膿疱(のうほう)から取った液体を注射する人痘接種法がすでにありましたが、それによって重傷化する人や死者も出ました。

編集Y ジェンナーは何を使ったんでしたっけ。

 牛痘ですね。牛の乳搾りをする人が感染し、その人は天然痘にかからないという伝承から「人間にとってはダメージの少ない病気に感染することで、天然痘への『二度なし』が手に入るのでは」と発想したのだろうといわれています。深掘りすると面白いんですが、まずは、「弱毒化した病原体で、感染を予防でき、接種自体による感染も防げる」という考え方ができたことを理解してください。これがワクチンの始まりです。

免疫は病原体を記憶している

 免疫学はどんどん発達して、二度かからない理由を探し続け、ヒトの免疫システムが解明されていきました。

編集Y で、二度目が(理屈としては)ない理由とは。

 ヒトの免疫系には「免疫記憶」というものがあることが分かってきたわけです。感染した病原体を記憶している細胞(メモリーB細胞やメモリーT細胞など)がある。初めて病原体が侵入した際は反応が鈍くて、すぐには反撃できないので感染を許してしまうんだけれども、2回目はもう免疫システムがレディゴーの状態でずっと構えているので、感染症を起こす病原体が入ってきた瞬間に、待ってたぜ、バーンと撃退できる。

編集Y 記憶というのは、具体的には……。

 ごく手短に言いますと、免疫系の細胞、T細胞とかB細胞は、病原体に対応するいろいろなパターンの抗体(免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質)などをあらかじめ用意していて、パターンに合うヤツがやってくると、活性化する。いろいろと言っても、1億とか2億とかじゃないですよ。

編集Y 100億とか、1兆とか。

 いや、1無量大数とかのスケールでのパターンが用意されているわけです。

編集Y 無量大数! 小学生のころに数字の単位を面白がって覚えましたが、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議の上、無量大数ですか。まさか生きているうちにこんなマンガみたいな単位を使う話を聞くとは。

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