どんな食事が病気の予防になるの? また、どんな習慣がアンチエイジングにつながるの? 世界中で進む、“健康”にまつわる研究について、注目の最新結果をご紹介します。
熟睡できなかった朝の濃いコーヒーは食後の血糖値を高めやすい

睡眠不足のときに濃いブラックコーヒーを飲むと、食後の血糖値が高くなることが、英国の研究でわかった。
平均21歳の健康な男女29人が3つの条件下で経口糖負荷試験(OGTT)を受けた。OGTTは75gのブドウ糖が含まれた飲み物を飲んで、その後採血をして血糖の変化を見るもの。
1つは、通常の睡眠(23時から翌7時まで就寝)を取り、白湯を飲んだ後でOGTTを受ける(対照群)。2つめは、就寝時間は同じだが1時間ごとに5分間起きるという断続的な睡眠の後に白湯を飲んでOGTTを受ける。3つめは断続的な睡眠を取り、濃いブラックコーヒー(約300mgのカフェイン含有)を飲んだ後でOGTTを受ける。3群とも白湯ないしはコーヒーを飲むのは、OGTTの30分前に設定した。
その結果、血糖値と血中インスリン濃度は、通常の睡眠か断続的な睡眠かでは変わらなかったが、断続的な睡眠+ブラックコーヒー群ではどちらも高くなった。血糖値のピークが、対照群では8.20mmol/L、断続的な睡眠群は8.23mmol/Lだが、断続的な睡眠+ブラックコーヒー群は8.96mmol/Lで有意に高かった(*1)。インスリン濃度のピークは対照群が265pmol/L、断続的な睡眠群は235pmol/L、そして断続的な睡眠+ブラックコーヒー群は310pmol/Lだった。またOGTT開始から120分間の血糖値を面積で表すAUCという数値で見ると、断続的な睡眠+ブラックコーヒー群は対照群に比べて約50%増加していた。
カフェインが筋肉への糖の取り込みを阻害し、さらにカフェインと睡眠障害によって血糖値を上げるホルモン(コルチゾール)が上昇して、血糖値の上昇につながったと研究者らは説明している。
(Br J Nutr.; 124,10,1114-1120,2020)
朝に体を動かそう 乳がんや前立腺がんの発症予防に
身体活動量が多い人ほど、がんの発症リスクは低くなるといわれるが、運動する時間も大切らしい。スペインの研究でわかった。
研究では乳がん女性781人、対照群の女性865人、前立腺がん男性504人、対照群の男性645人(計2795人)に、6カ月以上続けた運動を尋ね、運動した時間帯も調べた。
すると、朝の運動(午前8~10時)は、運動をしない場合と比較して、乳がん発症リスクは26%低く、前立腺がん発症リスクは27%低かった。朝の運動は他の時間帯に比べ水泳や自転車が多かった。また男性では夕方の運動(午後7~11時)でも前立腺がん発症リスクが25%低かった。
また就寝時間や起床時間などの質問票(MCTQ)を使って3つのクロノタイプ(朝型、中間型、夜型)に分けた。中間型と夜型の女性は朝の運動で乳がん発症リスクがより低下し、中間型と夜型の男性は朝の運動により前立腺がん発症リスクが低下していた。さらに閉経後女性のほうが閉経前女性よりも朝の運動の効果が高かった。
エストロゲン値が高いと乳がん発症リスクが増加するが、運動によりエストロゲン値は低下する。エストロゲンの一種であるエストラジオールの産生は午前7時ごろに最も高くなるといわれ、朝の運動はエストラジオール値を低下させる可能性があると研究者らは説明している。
(Int J Cancer; 電子版Sep. 25,2020)
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