職場やそれ以外でも、人間関係の悩みは一筋縄ではいきません。苦しくて仕方がなくなったとき、私たちは「この人間関係から逃げてはいけない、乗り越えなくては」と思い頑張ります。しかし、いろいろ工夫しても事態が好転しないときは「人間関係のトラウマ化」が起こっているかも。「そんなときは、悩みの対象の相手から離れることが一番現実的です」と言うのは、元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さん。今回は、甘く見てはいけない人間関係の悩みについて聞きます。

「人間関係のトラウマ化」とは何か
前回は、不本意な異動やうまくいかない人間関係に遭遇したときの対処の仕方を伺いました。このようなときは、まず、職場では満たされない思いを満足させられる別のルートを考えてみる、というふうに「現実問題への対処と、感情問題への対処を分ける」ことが大事。さらに、慣れるまでの数カ月間は様子を見るなど、「時間軸で見極めをする」ことが重要だと教えていただきました。
ただ、注意したいのは「人間関係の悩みがトラウマ化(深刻化)している場合」だ、と先生はおっしゃいました。今回は「人間関係のトラウマ化」とは何か、というところから伺っていきたいと思います。
下園さん まず、前回も説明した「表の不安、裏の疲労」の図を見てください。
これまで、「疲労には3段階のレベルがある」とお話ししてきましたが、不安と、それによって蓄積する疲労にもそれぞれ3段階のレベルがある、ということを示したのがこの図です。
人間関係の悩みが深まってきて、この先もっと悪くなる気がする、というときには不安のレベルはぐっと高まります(オレンジの部分。表の不安)。すると、同じストレス要因であっても、感じ方や傷つきやすさは、不安の2倍モードでは2倍、3倍モードでは3倍と高まります。
そして、ある程度慣れてきて、大丈夫かもしれないと思った頃、実は「裏の疲労」(青い部分)がたまっていきます。疲労が3倍のレベルまでたまると、同じように、普通の状態のときの3倍疲れやすく、傷つきやすくなります。
