疲労とは、「今日の体力」と「今日の活動量」の単純な比較で生じるもの。しかし、人は、頑張らなくてはいけないときには“気合い”で疲労感を抑え込んでしまう傾向にあります。体力が徐々に低下する一方で直面する課題も増えていく人生後半戦こそ、疲労の本質を正しく理解していきたい。第5回では、元・陸上自衛隊心理教官で心理カウンセラーの下園壮太さんに、新型コロナ禍によって私たちはどのような疲労をためているのか、疲労の性質とともに教えていただきます。

長引くコロナ禍で見えてきたこと
前回は、「疲労」というものを正しく知ることが大切であること、しかし、「疲れた」という感覚は、「今は休んでいる場合じゃない、気合いで乗りきるしかない!」という自分への言い聞かせによって容易に抑え込まれ、麻痺してしまう、ということを教えていただきました。今回は、さらに「疲労」の本質について詳しく教えていただきたいと思います。特に、新型コロナ感染拡大が長引く今、「テレワークで楽になった」と元気な人もいるものの、「気持ちが晴れない」という人も多くなっている感じがしています。
下園さん そうなんです。新型コロナウイルスは、命に直結する事態なので、感染拡大が始まって以降、人は感情を揺さぶられ続けてきました。当初は情報もなく、マスクや消毒液を買い求める必要があるなど、とにかく不安が大きかった。不安という感情はとにかくエネルギーを消耗するので、疲れが蓄積しやすいのです。
実は、エネルギーを消耗させ、うつ傾向が深まりやすくなる4条件というものがあります。コロナ禍は、この4条件を刺激し続けてきたといえます。

「自責感」とは、自分が人を感染させてしまうかもしれない、あるいは、もっとつらい状況の人がいるのに楽しいことをするのはよくない、というような感覚です。
「不安感」は、いつこの事態が収束するのか想像がつかない状況の中で、ずっと私たちを刺激し続けています。
「無力感」は、経済的な状況はもちろん、変化に振り回され、受け身でいるしかないようなときに高まります。これらの感情によって、「疲労感」が強くなり、4つの条件がそろうと非常にうつを発症しやすくなります。