人生後半戦、特にリタイア後には人と関わる機会が減り、社会的に孤立する人も少なくないと言われています。「人とつながる」ことの大切さは頭で分かっても、いざ新たな人間関係を築こうとすると、どこから始めたらいいか分からないし、なかなかパワーが出ない、ということもあるでしょう。元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さんに、新たな縁を作りたいときの方法や心の持ち方について伺います。

行動するかどうか、迷ったときは「トータルの苦しさ」を考える
前回、人とつながって「居場所がある」と感じられることが私たちの自信や安心感となり、無意識的に勇気づけられるのだ、ということをお話しいただきました。
人とのつながりを感じられたり、悩み事ができたときに気楽に話すことができる存在があることは、この先の人生後半戦でも大切なことだと思います。
ただ、もともと人付き合いが苦手だったり、仕事優先で生きてきて、若い頃の交友関係が途切れてしまった、という人もいるかもしれません。そういった場合、例えば新しくSNSで誰かとつながろう、ということ自体が高いハードルとなりそうです。
付き合いベタな人が新たな縁を作るヒントについて、今回はさらに詳しくお聞きしたいです。
下園さん 前回、私は「興味のあることを検索して、フェイスブック、ツイッターといったSNSのグループなどに登録してみることから始めよう」とお伝えしました。確かに、それまでSNSを経験したことがない人にとってはハードルがちょっと高いかもしれませんね。
面識のない人と会話をするとき、具体的な用事や質問があればやりとりしやすいのですが、SNSだと、気分のやりとりみたいな会話が多いですし、不意に攻撃される危険性もあります。
そういったことを懸念して、SNSは避けているという人もいるかもしれませんね。しかし、改めて思い出してほしいのですが、「ひと昔前」のコミュニケーションはどうだったでしょうか。かつては、自分と同じような趣味嗜好を持つ人と出会うことが、とても難しいことでした。近所付き合いや、消防団、婦人会のようなつながりはあるものの、そこでは、ごく限定された人にしか出会えません。地方の人口の少ない地域に住んでいると、なおさら出会える人の総数が少ない。本や映画、音楽、創作など、似たような趣味を持っている人を見つけることなど一生できないまま、という人だっていたでしょう。興味のある雑誌を買って、個人情報丸出しでペンフレンドを募集したりするしかなかったのです。