疲れがたまってきて、体力もガクンと落ちたような気がする――。一定以上の年齢になると、いろいろな側面でこうした「自信の低下」を実感することはないでしょうか。パワーダウンしている50代以降の人がこれ以上の消耗を避けながら着実に自信を回復していくには、「正しい順番」を踏むことが必要です。1ステップ目が疲労回復、2ステップ目が体力をつけること。そして今回は、3ステップ目の「人とつながること」の効果について、元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞いていきます。

ピンチになったときは「原始人」に当てはめよう
私たちが、低下した自信を回復したいときに行うべきことの「正しい順番」について、前回は1ステップ目の「疲労の回復」、2ステップ目の「体を動かして体力をつける」まで伺いました(第14回)。
自信がなくなってきたとき、つい、自信をなくした大元のスキルを磨かなくては、と頑張ってしまいがちなところですが、「休んで疲れをとる」「体力をつけて体の自信を取り戻す」などのほうを優先すべき、ということに驚きました。
下園さん そうなんです。先の見えない状況であっても、「何が起こっても自分はなんとか生きていける」という根幹を支えるものが「自信」です。私はよく「原始人に当てはめればよく分かる」と言うのですが、ピンチになったときのことも原始人に当てはめるとよく分かります。自信を失ったときは弱ったとき。休養をとってエネルギーを復活させる「疲労回復」と、戦闘能力を裏打ちする「体力回復」を優先させるほうが、賢いのです。
自信回復の3ステップ
1
疲労の回復(蓄積疲労レベルを1段階に戻す)
2
体を動かして体力をつけて「第1・第2の自信」を回復する
3
人とゆるやかにつながって、「第3の自信」を回復する
疲れがとれて、体力もちょっとついてきた。通常、そこで「もう大丈夫」と思ってしまいそうですが、もう一押し、3ステップ目の「人とゆるやかにつながって、『第3の自信』を回復する」が必要なのですね。
おさらいすると、自信には3つの要素がある、ということ(下図参照)。疲労回復と体力をつけることは、第1・第2の自信をつけること(自分はこれができる/自分の能力や生き方はこれでいい、という感覚)につながっていました。(第13回)。そして第3の自信(自分は人に愛され、守ってくれる人がいるという感覚)を取り戻すには、人とのつながりが大事だと…。
思うに、コロナ禍で、長期間、人と気軽に接することができなくなったこともまた、第3の自信に影響を与えているのではないでしょうか。
- ●第1の自信 =「自分はこれができる、勝てる」
- ●第2の自信 =「自分の能力や生き方はこれでいい」
- ●第3の自信 =「自分は人に愛され、守ってくれる人がいる。居場所がある」
下園さん そうですよね。以前までは、疲れやすいな、最近ぱっとしないな、と第1、第2の自信が低下しても、所属する組織に行けば同僚がいるし、趣味があれば仲間に会える…。もちろん人付き合いは楽しいことばかりではありませんが、ただワイワイやっていることで気持ちがずいぶん晴れていたものです。しかし、コロナ禍で人と会えない時間を長く経験し、「つながることで得られていたことがあった」と、気づいた人も多いでしょう。