日常の中で、怒ったり、嘆いたり、モヤモヤしたり、そんな気持ちを引きずってしまうことが誰にでもあるはずだ。いつも身近に何でも話せる友人や家族がいるといいが、なかなかそうもいかないことも。「そんなときは、自分の心の中で気楽に会議を開いてみましょう。カウンセリングを受けたように心が落ち着きますよ」と言うのは、元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さん。自分でできる「心の会議」の方法とコツを聞く。

考えを前進させるには「悩みの芯」に気づくことがカギになる
これまで、この連載では、ミドルエイジ以降に目立ってくる疲れやすさや怒りっぽさへの対処法を伺ってきました。疲れたときには「休もう」、イライラしたときには「まずは怒りの対象から離れよう」とすぐに自分に言うことができればよいのですが、なかなか難しいものです。ましてや、何かの出来事や誰かの発言をきっかけに、自分でもよく分からないままモヤモヤしたり、気分が落ち込む、というようなときは、解決法を考えようにも、取りつく島がないことも。コロナ禍の中で気軽に人に会うことがしづらい状況で、どんなふうに“困った気持ち”を取り扱えばいいのか、今回は伺いたいと思います。
下園さん 何かの出来事や誰かの発言について、なぜだかモヤモヤする……そんなときに効果絶大で、クライアントにもお勧めしているのが、「心の会議」です。これは、私がカウンセリングのときにクライアントに質問をするアプローチを、ご自身でもできるように、とアレンジした方法です。質問を投げかけるうちに、その人の“悩みの芯”のようなものが引っかかる。その“悩みの芯”に気づく、ということが、前に進むための強力な推進力になるのです。
悩みの芯というのは、何でしょう。なかなか見えてこないものなのですか?
下園さん 悩みの芯とは、いわば、その人の心の痛みの発信源のようなもの。通常の思考では見つけにくいものです。
あるとき、転職するかどうかで悩んでいたクライアントがこんなことを話してくれました。
転職コンサルタントなどに相談してみたけれど、現在の職場の「メリット」「デメリット」を挙げた上で「だからメリットのあるこちらに行ったほうがいい」とアドバイスされた。でも、本人はだんだん「こんなに選択肢は明白なのに、どうして動けないのか。そんなことも分からないのか」と責められているような気持ちになった、と。
同じようなことは、一人で悩みを考えるときにも起こりえます。
人は弱っていると、一人で考えるうち、だんだんそれが「反省会」になってきてしまうのです。本来反省すべきところ以外の、偶然性が高いミスなどについても、自分の努力不足、注意不足、能力不足、と感じてしまうようになる。自分に対してネガティブなフィードバックばかりするようになる。疲れがたまってくると、なおさらそうなります。
思い当たります。そうすると、ますます自分を追い込んでしまって、悪循環に陥るのですよね。「反省会」にならずに、前に進めるような心の会議にするコツはあるのでしょうか。