コロナ禍の不安な状況が続く中、様々な情報が溢れています。そんな中、身近な人が新型コロナウイルスのワクチンに関する誤情報やデマを信じ込んでいる、といったケースも見聞きします。「その情報、明らかに偏っているのでは?」と思っても相手が頑なになっていると話がかみ合わず、人間関係が壊れてしまうことも。「実は、理論的に物事を考える人ほど何かを信じ込むと強固に理論武装するため、理論で訴えてもその考えを変えることは難しい」と元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さんは言います。今回は、何かを頑なに信じている人の心に起こっていること、そういった人とどう接すればいいのかについてお聞きします。

不安が強くなるほど、偏った思考に引き寄せられがちになる
一般に不安な状況が続くときなどには誤情報やデマなどが流布し、それを信じてしまう人がいるというケースはこれまでも耳にしました。例えば最近では、コロナ禍の中で、身近な人が新型コロナウイルスのワクチンに関する誤った情報やデマを信じ込んで、そのデマを広めたり、「大事な情報は隠されている」などと言い出したりするケースが少なからずあると聞きます。ワクチン接種をめぐるいさかいが離婚に発展したり、人間関係が壊れるケースもあるようです。どのように対応すればいいか、そのヒントをお教えいただきたいと思います。
下園さん まず、長引くコロナ禍の中で、多くの人が疲労をためている、そのことから様々な心の問題が派生的に起こっているということについておさらいしましょう。
コロナ禍が始まった当初は、新型コロナウイルスという生命を脅かす危機に対し、誰もが大なり小なり、波がありながらも長期間の不安を感じ続けてきました。
不安が大きくなると、頭の中で「もしこうなったら」「この先、こんなことが起こるかも」と様々なシミュレーションをし続けます。また、不安は不眠を誘発します。少し先の未来をあれこれシミュレーションすることも、満足に眠れないことも、じわじわとその人のエネルギーを消耗します。
一方で、ストレスの解消手段もことごとく制限されてきました。旅行やスポーツ、カラオケ、飲み会などがなくなり、人々の間に分断や孤立が生じました。これまで当たり前にできていた世間話も減ってしまいました。
度重なる感染の再拡大によって、不安がしぼんではふくらむ、ということを繰り返し、人々のエネルギーは消耗し、エネルギーを充電する気晴らしも制限され、我慢が続いてきました。そのような状況が、これほど長く続くとは誰も想像しなかったでしょう。その結果、目に見えない疲労をためこんでしまっている人が多いのです。私はこのような蓄積疲労によって心身に出るサインを次のような「心と体のチェック項目」としてまとめています。今一度、この連載の読者のみなさんもご自身の状態を振り返ってみてください。