怒りは、あなたの命や立場を守るために発動し、怒りの対象となる人を攻撃しようと訴えかけてくる感情。その勢いの強さゆえ、カッとして言い過ぎてしまったり、周囲から孤立するなど人間関係を壊す原因にもなる。元・陸上自衛隊心理教官の下園壮太さんは、怒りがいったん収まった時点で、怒りの出来事についてあらためて「考える」ことが重要だと説く。特に、中高年以降には「自分が正しい」という価値観の頑固化が起こりやすいが、「考える」プロセスを踏むことは、頑固化した価値観をほぐすトレーニングになるという。

「自分は安全な場所にいる」と感じた上で、振り返る
前回は、怒りという感情を手当てするプロセスとして、第1ステップの「離れる」、第2ステップの「安心する」まで教えていただきました。
「離れる」は、腹の立つ出来事があった現場や怒りの対象から離れる、ということ。そして「安心する」は、もうそばに敵はいないし自分の身の安全も確保されている、というふうに原始人的な安心の感覚を得る、ということでした。
今回は、第3ステップの「考える」について教えていただきます。体からのアプローチを重視した「離れる」「安心する」と比べて、理性的な思考が必要となってきそうですね。
感情の取り扱い方は3ステップで
第1ステップ=「離れる」
刺激(怒りの対象、原因)から、物理的、心理的、時間的に「離れる」(逃げる)
第2ステップ=「安心する」
心から安心できるような環境を作る
- 追加の怒り刺激を入れない
- 体を緩める
- 安心できることをやってみる
第3ステップ=「考える」
もう一度、怒りの出来事を冷静に考察する
下園さん 怒りは瞬発力の強い感情です。自分が攻撃された、被害を受けた、生命を脅かされた、と反応している原始人的な感覚を、まずはなだめる必要があるために、第1ステップの「離れる」、第2ステップの「安心する」というプロセスが必要でした。本能的に身の安全を理解することで、燃え上がっているような怒りの火の勢いを鎮めることができます。まずこの初期消火に努めないと、怒りの感情がくすぶったままとなり、夜中になっても「敵」のことを繰り返し反すうし、結果的にエネルギーを消耗してしまいます。
怒りの勢いがいったん収まり、自分の中の“原始人”が「自分は安全な場所にいる」と感じることができた時点で、怒りの出来事に向き合うのが「考える」ですね。でも、腹の立つことを考えるのは、難易度が高そうです。
下園さん そう。難しいのです。難しいので、私はクライアントに、怒りの出来事をいろいろな角度から見つめ直す「7つの視点」という方法をやっていただいています。怒りに対してはなかなか冷静になれないものですし、特に、中高年以降には「自分が正しい」という価値観の頑固化が起こりやすい。「7つの視点」には、
- ●怒りの出来事を冷静に振り返る
- ●頑固化した価値観をほぐす
という2つの大きなメリットがあります。