肩こりの原因は複数あることも
肩こりはつらいですよね。肩こりがひどくなってマッサージに駆け込む人は多いですが、「マッサージに行っても、すぐにまたぶり返してしまう」という話もよく聞きます。
マッサージだけに頼って肩こりを解消しようとしても、根本的な解決にはなりません。相談者の方のように運動を取り入れるのはよいことですが、それでも肩こりが治らない場合も少なくないですよね。
それはなぜでしょうか? 肩こりというのは、実は一つの原因で起きるわけではないからです。
肩こりの原因は、筋力不足、血行不良、ストレス、と大きく3つに分けられます。
筋力不足でなぜ肩こりが起きるのかというと、人間は、1本で約2~3㎏ある腕や、約5~6kgある頭を、首から肩を覆う僧帽筋をはじめとする、さまざまな筋肉で支えています。ある筋肉の力が衰えると、その分、ほかの筋肉に負担がかかるようになります。すると、負担が余計にかかっている筋肉が疲れやすくなり、それがコリにつながるのです。
また、筋肉は使わないと力が弱くなっていきます。例えば、「バッグが重いのは嫌だ」と、荷物を軽くすれば、それに伴って、バッグを持つための筋力はどんどん低下していきます。たまに、彼氏にバッグを持ってもらっている女性を街中で見かけますが、フィジカルトレーナーとしては「自分で持たないと筋力が衰えますよ!」と言いたい気持ちになります(笑)。
本人は楽をしているつもりかもしれませんが、楽をすればするほど、筋力も落ちていきます。筋力不足で肩こりが起きている人が、なるべく重い荷物を持たないようにすると、筋力不足が解消されることもなく、肩こりはひどくなる一方なのです。
一般に、女性のほうが筋力不足に陥りやすいので、慢性的な肩こりで悩んでいる女性は、肩の周辺の筋肉を筋トレで鍛えたほうがいいかもしれません(肩こり解消に効果的な筋トレの方法については「もはや女性が『筋トレしない理由』はない」をご覧ください)。
肩の関節を動かさないことで周辺の筋肉が血行不良に
血行不良によっても肩こりは起きます。肩の関節の周辺にある筋肉を動かさないことで血行不良が起き、それにより老廃物などが排出されにくくなり、痛みやコリが生じるのです。
肩の関節は、人間の関節のなかでも、最も多くの方向に動くといわれています。可動域がそれぞれ非常に広いのも特徴です。この関節は、上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨によってできていて、非常に不安定な構造をしているので、多くの筋肉や腱などによって支えられています。
さまざまな方向に広く動くということは、動作をコントロールするためにも多くの筋肉が必要だということです。つまり、肩の関節を十分に動かさないでいると、動かない筋肉が増えるため、血行不良が起きやすくなってしまうのです。
読者のみなさんも、今日1日の行動を振り返ってみてください。肩の関節をどれぐらい動かしたでしょうか。「そういえば、今日は一度も腕を高く上げていない」と気づいた人も、少なくないでしょう。ラジオ体操のように、腕を大きく上に挙げたり、グルッと回す動きは、日常生活ではあまりしないものです。
人間は、できるだけ体が疲れないような生活様式が身に付いています。例えば、キッチンやダイニングでは、よく使う食器類を取り出しやすい高さの棚にしまっておきます。リビングでは、テレビなどのリモコンを、少し手を伸ばせば取れる位置に置いておくのが普通です。すると、日常的な動作では肩の関節を大きく動かすことが少なくなり、血行不良になりがちになるのです。
血行不良を防ぐためには、腕を大きく回す動的ストレッチが効果的。ぜひ試してみてください(動的ストレッチの具体的なやり方については「慢性のつらい肩こりも撃退! 肩をぐるぐる回す動的ストレッチ」をご覧ください)。