「ヘルニア」があるからといって治療が必要とは限らない
腰痛で病院に駆け込んでも、特段治療はせず「様子を見ましょう」と言われることが実際に多いですよね。何か治療を期待していたのに、湿布を渡されるだけで拍子抜けした、と感じる人は多いようです。
相談者の方は「ヘルニアがありますね」とMRIの結果を見て言われたのですから、なぜ治療しないのかと疑問に思ったかもしれませんが、医師がそのように診断したのには、きちんとした理由があるはずです。
椎間板ヘルニアとは、背骨の骨(椎骨)と骨との間でクッションの役割を果たしている軟骨(椎間板)が変性し、組織の一部が飛び出すことをいいます。このとき、飛び出した椎間板の一部が、付近にある神経を圧迫すると、腰や足に激しい痛みやしびれなどの症状が起きることもあります。
実は、椎間板ヘルニアの9割は自然に治るといわれています。飛び出した椎間板が、白血球の一種であるマクロファージに食べられたりして、時間が経つと消えてしまうからです。湿布を貼って様子を見ているうちに痛みが消えることも、実際に多いのです。
「様子を見ましょう」と言われるのは、そのためだと思います。椎間板ヘルニアが原因でしびれや麻痺、排尿障害などがある場合は、手術が必要になることもあるそうです。
ストレスがあると痛みを感じる仕組み
厚生労働省の推計によると、腰痛を抱えている日本人は2800万人。ところが、医師の診察やMRIなどの画像検査で腰痛の原因が特定できるのは、わずか15%だといわれています。残りの85%は、原因を厳密には特定できない「非特異的腰痛」なのです。
原因が特定できるケースでは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、重篤な脊柱の病変などが挙げられます。
原因が特定できない85%のケースでも、ひょっとして、より精密な検査を行えば原因が分かることもあるかもしれません。ただ、多くの場合、原因が厳密に分からなくても、時間が経てば自然と痛みが消えていくので、やはり「様子を見ましょう」と言われるのです。
なぜ原因不明の場合でも時間が経つと痛みが消えるのかというと、腰痛には「ストレス」が関係していることが多いからです。
腰痛にストレスが関係することは、さまざまな論文によって明らかになっています。福島県立医科大学の研究では、ストレスが高まることによって脳の血流量が減り、前脳にある「側坐核」という部位の働きが低下すると、腰に痛みを感じやすくなるということが分かりました。
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