2 「イタ気持ちいい」強さで伸ばす

サルコメアを増やすためには、脳に「筋肉が切れそう!」と思わせることがポイントですから、「気持ちいい」と感じる程度の強度でストレッチを続けても、柔軟性の向上は期待できません。
一方、「イタイ」と感じるほど強く伸ばすのもNG。筋線維には筋肉の長さを察知するセンサー(筋紡錘)が備わっています。筋肉を切れる寸前まで伸ばすと、筋紡錘がそれを感知し、「このままだとヤバイので筋肉を収縮させなさい!」と脳に指令を出します。すると、サルコメアが増えるどころか、逆に筋肉が硬くなり、伸びなくなります。
効果的なストレッチの強度は「イタ気持ちいい」と感じる程度。伸ばしたときに、筋肉がプルプルと震えてきたら、それは強すぎるのだと覚えておきましょう。
3 伸ばしたら「20~30秒キープ」を2~3セット繰り返す
ストレッチは1部位に対し、伸ばしてから20~30秒キープを2~3セット繰り返します。1~2分伸ばし続けるよりも、「いったん緩めて再び伸ばす」を繰り返すことが、ストレッチの効果をより上げていくコツです。
例えば立位体前屈を行った際、多くの方は1回目より2回目のほうが、柔軟性が上がっていると感じると思います。これは、サルコメアの数が増えたことが理由ではなく、筋肉を包む組織である「筋膜」による抵抗が弱くなるためです(残念ながらサルコメアは1回のストレッチで増えることはありません)。
筋膜は、一度引き伸ばされると緩むという性質があります。つまり、「伸ばして戻す」動作を繰り返すことで、どんどん筋膜が緩んでいくのです。すると、サルコメアを増やすために最適な強い刺激を、筋線維に与え続けることができます。
また、筋膜は体が冷えていると硬くなり、体温が上がると緩むのが特徴です。実は私たちトレーナーも、クライアントにストレッチを行う際、最初にマッサージとして筋肉を繰り返し押して温め、筋膜を緩めてから行います。ですから、運動の後やお風呂上りにストレッチを行うようにすると、全身の筋膜が自然と緩むので、効果もアップしますよ。
4 ストレッチは硬い筋肉を優先して行う
人はストレッチを行う際、もともと柔らかい筋肉ほど、一生懸命に伸ばそうとする傾向があります。やりやすい部位をつい優先してしまう気持ちは分かりますが、それでは柔らかいところはより柔らかく、硬い部分は硬いままになり、全身の柔軟性がアンバランスになる一方です。
ですから、ストレッチは硬い筋肉を優先して行いましょう。できれば一度、ストレッチやマッサージのサロン、ジムのトレーナーなどの専門家に、どこの筋肉が硬いのかをみてもらうといいでしょう。
このとき、部位ではなく「筋肉名」で教えてもらうことが大切です。「股関節が固い」「肩回りが固い」と言われても、その一つの部位にある筋肉はたくさんあります。股関節や肩回りの「どの筋肉か」を聞いて、その筋肉名を本やインターネットで調べ、具体的なストレッチ方法を探せばOKです。
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サルコメアは、年齢とともに数がどんどん減っていきます。それでも、毎日ストレッチを続ければ、何歳になっても柔軟性は向上することができます。継続は力なり。いつまでも快適に動ける体をキープしてください。
【中野さんからのアドバイス】
体が硬いのを解消するには…
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ストレッチを毎日2~3カ月続ければ誰でも柔らかくなる
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「イタ気持ちいい」強さで伸ばす
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伸ばしたら「20~30秒キープ」を2~3セット繰り返す
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ストレッチは硬い筋肉を優先して行う
(まとめ:長島恭子=フリーライター)

