アスリートが海外大会の1カ月前から睡眠を調整するワケ
睡眠による疲労回復を重視するアスリートたちは、オンの日もオフの日も同じ時間に起床し、就寝します。
また、時差のある海外での大会に向けては、1カ月ほど前から起床時刻と就寝時刻を調整していきます。本番の大会でも、睡眠中にしっかり成長ホルモンを分泌させて、十分に疲労を回復するためです。そうすれば、海外の大会でもベストのパフォーマンスを発揮できるようになります。
ところで、「運動をすると良質な睡眠につながる」とよくいわれますが、多くの人はその理由を「運動して体が疲れるからぐっすりと眠れる」と考えているかもしれません。確かにそれも一理ありますが、実際には運動することで成長ホルモンの分泌が促されるためでもあるのです。
運動をすると、少しずつ体の様々な組織が破壊されます。すると、脳は体のダメージを察知し、修復しようとします。睡眠圧が高まって眠くなり、眠りにつくと成長ホルモンが分泌されて体の組織が修復されるのです。
ですから、寝ても疲れがとれない、寝つきが悪い日があるという人は、運動をすることで快眠を得られる日が多くなるはずです。
「あえて疲れる生活」が快眠のコツ!
相談者の方は、恐らく運動の習慣がないのではないかと思います。
最近は、テレワークで家にこもって仕事をする人が増えてきました。通勤がないので体を動かす機会が減り、それもあって睡眠のリズムが崩れやすくなるのです。
体を動かさないと、体の組織が受けるダメージも少なくなるので、脳は積極的に成長ホルモンを出して修復しなくてもよいと判断するのかもしれません。その結果、寝ても疲労が抜けなくなるのでしょう。
ですから、昼間の運動量を増やすことが何より重要です。ウォーキングや軽いジョギング、または家の中で筋トレをするのでもいいでしょう。とにかく体を動かして、成長ホルモンの分泌を促しましょう。
ただし、就寝前の過剰な運動は、交感神経を優位にしてしまい、寝つきが悪くなるというデメリットもあります。どの程度の運動ならば問題ないかは人によって異なるので、探りながら続けてみてください。
また、体を動かすことで睡眠の質が上がると、夜中に起きてしまう「中途覚醒」を減らすことも期待できます。
深い眠りを得るために、運動を取り入れたり、外出したらエスカレーターやエレベーターではなく階段を使って移動するなど、あえて「疲れる生活」にトライしてみましょう。
【中野さんからのアドバイス】
睡眠で疲労が回復しづらいと感じている人へ…
▶
なかなか眠れないときは無理に眠ろうとしなくてよい
▶
休日に遅くまで眠るのは逆効果。なるべく同じ時間に眠る
▶
昼夜逆転すると成長ホルモンの分泌が不十分で疲労が回復しない
▶
「あえて疲れる生活」で快眠を!
(まとめ:長島恭子=フリーライター/図版制作:増田真一)
