「いや、座りっぱなしのほうが疲れないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、これは本当です。
BMI(*1)が25以上の肥満である19人を対象にした実験で、ずっと座りっぱなしの場合と、30分ごとに3分の軽いウォーキングを行う場合とで疲労度を調べたところ、4時間後および7時間後では、いずれも軽いウォーキングを取り入れた場合のほうが疲労が軽かったという結果になりました(*2)。
また、オフィスの環境で、1日8時間座った姿勢で過ごす群と、電動式の高さ調節デスクを使って30分おきに座ったり立ったりした状態で仕事をする群とで疲労度を調べた実験では、やはり座りっぱなしのほうが疲れていたという結果になりました(*3)。これは、BMIが25以上の肥満の23人を対象にした研究です。
なお、集中力の点では、座り続けた群のほうが高かったものの、全体の仕事の生産性については、座ったり立ったりを繰り返した群のほうが高かったそうです。
*2 BMJ Open. 2016;6(2):e009630.
*3 Occup Environ Med. 2014 Nov;71(11):765-71.
体を動かしたほうが血流が増加して疲れが取れる
なぜ、座りっぱなしのほうが疲れを感じやすく、立ったり歩いたりもするほうが疲れにくいのでしょうか。
はっきりとした理由は分かりませんが、座りっぱなしを中断して立ったり歩いたりすることが心理的にも気分転換になったり、短い時間でも歩くことが自律神経のバランスを整えたりする効果があるのではないか、といった可能性が考えられます。
ほかにも、立ったり歩いたりすることで、血流が増加することもプラスに働くでしょう。
血液は、心臓から押し出されたあと、脚の静脈を通るときに重力に逆らって進まなければなりません。そのため、脚の静脈の周辺にある筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで血管を圧迫し、血液を押し出す“ポンプ作用”が必要になります。
座りっぱなしだと、脚の筋肉が動かないので、ポンプが働きにくく、脚に血液などの体液がたまりがちになります。つまり、脚がむくみやすくなります。一方、立ったり座ったりを繰り返したり、歩いたりすることで、脚の筋肉がギュッギュッと血液を押し出してくれるのです。
こうして血流が増加すると、たまっていた疲労物質が流れ出ていくので、スッキリします。逆に、血流が少ない状態だと、疲労物質がたまりやすく、疲れがとれにくいのかもしれません。