「コンタクトレンズが目の裏側に落ちた!」救急受診すべき?
第1回 コンタクトレンズのトラブルで受診が必要な場合とは
石岡みさき=みさき眼科クリニック院長
目のかすみや痛み、かゆみ、異物混入など、目にまつわるさまざまなトラブルが起きたときに、急いで眼科を受診すべきなのはどんな場合なのでしょう? 反対に、あわてなくてもよいケースとは? 失明の恐れのある緑内障など、重大な病気を見落とさないためにはどうすればよいのでしょうか? この連載では、眼科専門医の石岡みさき先生(みさき眼科クリニック院長)が、実例を基に、目の健康を守る秘訣をアドバイスしていきます。今回のテーマは「コンタクトレンズのトラブル」です。
ある晩、小学校の同級生から筆者(眼科専門医)に、こんな電話がかかってきました。
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ごめんね、夜に突然電話して
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いや大丈夫だけど、どうしたの? |
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うちの高校生の娘なんだけど、コンタクトレンズを最近使い始めたの。今日どうしてもレンズが取れなくなってしまって、もう眼科もやっていない時間なので、救急車を呼んでくれって言ってるのよ
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え~っ
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そうでしょ、私も明日で大丈夫じゃない?って言ったんだけど、レンズが目の裏に落ちちゃうってパニックになってて…。私はコンタクトをしたことないから分からないけど、目の裏にレンズが行っちゃうことなんてないよねえ?
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ないない
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(エピソードは実際にあった話をいくつか組み合わせて脚色しています)
コンタクトレンズが目の裏側に落ちることは「ありません」!

コンタクトレンズを使い始めたばかりの人や使ったことのない人は、よく「レンズが目の裏側に行ってしまって取れなくなったらどうしよう」と心配されますが、レンズが目の裏側に行ってしまうことは、構造からいってありえません。
眼球の断面図を見てください(図1)。眼球の表面は黒目部分の「角膜」と粘膜である「結膜」(図の色つき部分)で覆われています。結膜炎のときに充血する部分が結膜です。撮影用に上のまぶたをひっくり返した写真を見てみましょう(図2)。図1や図2から分かるように、結膜はまぶたの裏側から白目の表面まで続いていて、眼球の表側と裏側はきっちり隔てられています。ゴミやコンタクトレンズなど、目に入ったものがまぶたの奥に入ってしまうことはあっても、眼球の裏側に行ってしまうことはありません。表面に見えていない、眼球を動かす筋肉の手術をするときなどは、結膜を切って行っているのです。
