「近くばかり見ていると近視になる」は本当か
第11回 近視の原因と、進行を抑えるための治療法
石岡みさき=みさき眼科クリニック院長
目のかすみや痛み、かゆみ、異物混入など、目にまつわるさまざまなトラブルが起きたときに、急いで眼科を受診すべきなのはどんな場合なのでしょう? 反対に、あわてなくてもよいケースとは? 失明の恐れのある緑内障など、重大な病気を見落とさないためにはどうすればよいのでしょうか? この連載では、眼科専門医の石岡みさき先生(みさき眼科クリニック院長)が、実例を基に、目の健康を守る秘訣をアドバイスしていきます。今回のテーマは「近視のしくみと進行抑制」です。
子どもの視力について相談に来た母親との会話です。
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先生!うちの子に「近視が進むからスマホを使わないように」って言ってください!!
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スマホをやめても近視の進行を止められるわけじゃないですよ。近視を進ませないようにするには、遠くを見ていることです |
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え? 先生、本気で言ってます…??
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近くばかりを見ていると近視は進みますが、それはスマホに限りません。勉強するときに近くを見ることも近視進行につながります |
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それじゃあ勉強できないじゃないですか~
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近視の進行とスマホ、勉強を一緒に考えるからですよ。「スマホばっかり見ていないで勉強しなさい!」でいいのでは? |
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そんなあ…
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(エピソードは実際にあった話をいくつか組み合わせて脚色しています)
人の眼球は成長とともに伸び、ピントの合う位置がずれていく
近視は、遺伝や環境など、さまざまな要因が絡み合って発生します。両親が2人とも近視が強いと、子どもの近視は強くなります。環境要因として分かっているものは、「近くを見る頻度の高さ」と、「屋外での行動が減ったこと」です。
目の中に入った光が眼球の後ろにある網膜の上でピントが合っている(像を結んでいる)状態は正視と呼ばれ、メガネなどで矯正しなくても遠くが良く見えています。一方、網膜よりも手前にピントが合ってしまうのが近視の状態で、遠くが良く見えません(図1)。
人の眼球は、生まれたときから20歳くらいまでは伸びていきます。その伸びによって、ピントが合う位置がずれていくと、成長と同時に近視が進んでいきます。成長による変化なので、なんらかのトレーニングで近視がなくなることはありません。
メガネをかけると近視が進む、あるいはメガネをかけたりはずしたりすると近視が進む、とよく患者さんに言われるのですが、どちらも進みません。メガネをかけるようになるのが近視進行の時期ですので、進むように見えるだけです。