日々の生活習慣次第でがんの罹患リスクを下げられることは、本連載で繰り返しお伝えしてきました。では、どんな生活習慣を心掛ければいいのでしょうか。
国立がん研究センターでは、科学的根拠のある「5つの健康習慣」を提唱しています。今回は、この5つの健康習慣の中から、「食生活を見直す」と「体型(適正体重)を維持する」の2つについて詳しく見ていきましょう。
前回は、私たち国立がん研究センターがこれまで蓄積してきた研究成果を基に提言している、日本人が実践すべき「5つの健康習慣」を紹介しました。5つの健康習慣とは具体的に、「禁煙する」「節酒する」「食生活を見直す」「身体を動かす」「体型(適正体重)を維持する」の5つです。

この5つの健康習慣は、「やればやるほど効果が期待できる」、つまりがん罹患リスクを下げられるという科学的根拠がそろったものです。この5つの健康習慣を実践する人は、0または1つ実践する人と比較して、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低かったという人を対象とした研究からのエビデンスも出ています。
そして、これらの健康習慣は、がんだけでなく、循環器疾患や糖尿病といった病気の予防にもつながります。1つでも多く実践してください。
今回は、前回解説した「禁煙」に引き続き、「食生活の見直し」と、食事とも密接に関係する「体型の維持」の2つについて見ていきましょう。
科学的根拠があるのは「塩分」「野菜・果物」「熱い飲み物」
世界的に見ても、日本人は健康と食べ物の関係に対する関心が高いようです。前述の5つの健康習慣の中で、最も気になるのは「食事」という人も多いでしょう。実際、テレビの健康番組などでも、食材の健康効果がよく取り上げられています。
しかし、メディアなどでよく見かける「〇〇ががん予防に効く」という情報は、その科学的根拠を調べると、動物実験の結果だけに基づいていたり、人を対象とした研究であってもただ一つの研究報告をもとにしているなど、科学的根拠が乏しいものが多いのが現実です。
では、科学的にがん予防の効果が期待できる、食生活における対策にはどのようなものがあるのでしょうか。私たちが科学的根拠を基に推奨しているのは、以下の3項目です。
- 1 減塩する(塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする)
- 2 野菜と果物をとる(野菜や果物不足にならないようにする)
- 3 熱い飲み物や食べ物は冷ましてから(飲食物を熱い状態でとらない)
先にお伝えしておきますが、この3項目さえ意識すればいいわけではありません。「いろいろな食材をバランスよく摂取する」ことが大前提です。この基本があったうえで、3項目を実践していただきたいということです。この考えを踏まえつつ、順に説明していきましょう。
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