日本初! 足専門の総合病院「下北沢病院」(東京・世田谷区)。同院に所属する医師たちが、足を健康に保つ“健足術”を解説する連載。今回のテーマは「巻き爪」。巻き爪や陥入爪などの爪トラブルは、爪の切り方を変えたり、歩き方を変えるだけでも防げます。深刻な事態になる前に、自分でできることから始めましょう。

足は骨や筋肉、靭帯など、いくつものパーツが精密に組み合わさり、体重を支えている。
「実は足の爪も、体重を支えるという重要な役割を担っています」と話すのは、足を専門的に治療する総合病院、下北沢病院院長の菊池守さんだ。
つま先にグッと重心をのせたり、足を支えたりするとき、指先には負荷がかかる。爪はその負荷がかかる指先を補強する働きをしているのだ。
そんな足の爪が内側に丸まって「巻き爪」になってくると、足指に強い痛みを引き起こすことがある。
「実は、手の爪も足の爪も、爪はもともと巻き気味に生える性質を持っています。親指でしっかり地面を踏みしめ、足指に正しく体重がかかっていれば、そのたびに足指は地面から押されます。だから爪は下から押されて丸まらず、足指に沿ったなめらかな曲線を保つことができます。しかし、足指の爪に均一に力がかからないようになると、爪はどんどん巻いていってしまうのです」(菊池さん)。
爪は 巻く性質 がある
足の指をしっかり使うと平坦に
爪はもともと巻き気味になる性質がある。足指をよく使い、指に正しく荷重がかかっていれば、指の肉が地面から押し返されることによって爪は平坦になる。運動不足などで、足指が使われていないと、爪は巻いてくる。

菊池さんが、世田谷区で訪問看護、デイサービスを利用している高齢者676人に対して行った調査では、巻き爪や、爪が下方にカーブしながら皮膚の中に伸び、痛みを生じる「陥入爪(かんにゅうそう)」がある人は、32.1%だったという。
「内訳は男性22.4%、女性38.0%です。高齢になり、あまり自分の足で歩かないようになると、足指が地面から押されることがなくなり、巻き爪や陥入爪が進行してしまうのです。巻き爪は親指がなるもの、と思われがちですが、決してそんなことはありません。巻き爪は他の指でも起こります。高齢者であまり歩かない方になると、全部の足指の爪が巻いてしまうこともあります」。